2019年10月15日 植物の新たな防御機構を発見 ウイルス病の新たな防除法への応用に期待

農研機構と佐賀大学は、植物がもつ新たなウイルス防御機構をダイズから発見した。

ある種のウイルスは、生物の免疫機構から逃れるため、感染した細胞内に「隠れ家」を作り、そこでゲノムを増幅する。今回の研究では、ダイズモザイクウイルス抵抗性遺伝子「Rsv4」から作られるRsv4タンパク質が、ウイルスの「隠れ家」を見つけ出してウイルスゲノムを分解することにより、感染を防いでいることが明らかになった。

さらに、この仕組みを応用し、様々なウイルスの増殖を抑制する人工タンパク質の作成に成功した。

この研究成果については、ダイズモザイクウイルス抵抗性ダイズ品種の開発に役立つだけでなく、様々な農作物のウイルス病に対する新たな防除法に繋がると期待されている。

 

隠れて増えるウイルスゲノムを見つけ出して分解

ダイズモザイクウイルス(SMV)は、ダイズに感染すると収量や品質の低下を引き起こす。そこで、防除手段として古くからSMV抵抗性のダイズ品種が育成されてきた。しかし近年、従来利用されてきたSMV抵抗性遺伝子が効かないSMV変異株が出現し、問題となっている。

今回、農研機構と佐賀大学の研究チームは、変異株を含む広範囲のSMVに有効なダイズのSMV抵抗性遺伝子「Rsv4」を特定し、その遺伝子から作られるRsv4タンパク質が、これまで知られていない全く新しい仕組みでSMV感染を防ぐことを明らかにした。

SMVのようなRNAウイルスは、感染した生物の防御機構に見つからないよう、細胞内に「隠れ家」を作り、そこでゲノムを複製することが知られている。Rsv4タンパク質は、この「隠れ家」を見つけ出してウイルスゲノムを分解することで、ウイルス感染を防いでいることが分かった。

さらに、研究チームはこの仕組みを応用し、トマトのトマトモザイクウイルスや、非常に多くの植物に感染するキュウリモザイクウイルスなど、ダイズ以外の作物で問題になっている様々なウイルスに対して、ウイルスの「隠れ家」に忍び込んでゲノムを分解する人工タンパク質を作成し、これらのウイルスの増殖を抑えることに実験室レベルで成功した。

これらの成果により、従来の抵抗性遺伝子を持つダイズ品種へRsv4遺伝子を集積し、打破されにくい持続的な抵抗性をもつ品種の開発が可能になる。また、天然の抵抗性遺伝子が利用できないウイルスや抵抗性遺伝子を打破する変異ウイルスに対しても、新たな抵抗性遺伝子が設計可能となると期待されている。


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