2022年5月30日 森林総研、クビアカツヤカミキリを分析 侵入地域間で遺伝的に異なることが判明 複数回の侵入によって急速に分布が広域化

(国研)森林研究・整備機構森林総合研究所の研究グループは、日本各地で採集されたクビアカツヤカミキリのミトコンドリアDNAについて遺伝子解析を行い、主な分布地域間で本種が遺伝的に異なっていることを明らかにした。クビアカツヤカミキリは外来の樹木害虫で、幼虫がサクラやモモなどの幹を食害し、多数が穿孔すると木を枯死させることがある。2012年に本種による樹木被害が国内で初めて確認されて以降、10年間で本州、四国の様々な地域で分布が確認されるようになった。今回の研究結果は、この急速な分布の広域化が国内各地にクビアカツヤカミキリが別々に持ち込まれたことによって起こったことを示している。研究グループは、本種が国内の様々な地域に別々に侵入したことを踏まえ、今後の対策を検討することが必要だと指摘している。

 

ミトコンドリアDNAの遺伝子解析

「クビアカツヤカミキリ」は、サクラやモモなどのバラ科樹木を食害する外来の害虫。その幼虫は樹木の名部を食い荒らし、樹木を弱らせる。本種による被害が深刻な地域では、サクラ並木やモモの果樹園で枯死が相次ぎ、社会問題になっている。

また、国内では、愛知県で2012年にはじめて樹木への加害が確認されて以降、この10年間で本州・四国の様々な地域で分布が確認されるようになった。

本種の分布拡大を予測し被害拡散を防ぐには、なぜこのように急速な分布の広域化が起こったかを知る必要がある。外来種の分布拡大のプロセスの解明では、ミトコンドリアDNAの遺伝子解析が主要な方法として用いられる。この方法を利用し、地域間で遺伝的に同じか違うかを調べることで、国内に持ち込まれたのは1回でそのあとに長距離を移動して拡がったのか、それぞれの地域で別々に持ち込まれたのかを知ることができる。

 

国内の様々な地域に別々に持ち込まれて急速に分布が広域化

今回の研究では、クビアカツヤカミキリの侵入が確認されている埼玉・群馬・栃木・茨城県境部、埼玉南部、東京西部、愛知西部、大阪南部、徳島北部の6つの地域からクビアカツヤカミキリ120個体を採集し、ミトコンドリアDNAの一部分の塩基配列の解析を行った。

その結果、国内のクビアカツヤカミキリは侵入地域間で遺伝的に異なることが明らかになった。各地域で見つかった遺伝子型は、埼玉・群馬・栃木・茨城県境部と東京西部で同じ型があった以外は、すべての地域間で異なっていた。

この結果から、クビアカツヤカミキリは国内の様々な地域に別々に持ち込まれたことで、急速に分布が広域化したと考えられる。

 

水際対策の強化が重要

日本では、近年、クビアカツヤカミキリに加えて、ツヤハダゴマダラカミキリやサビイロクワカミキリといった他の外来のカミキリムシ類による樹木被害も相次いで確認されている。今回の研究成果では、クビアカツヤカミキリを含めた外来の樹木害虫による被害拡大を防ぐためには、被害地における防除だけでなく、さらなる侵入を防ぐための水際対策の強化も重要であることが示された。


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