2016年6月24日 林木遺伝子銀行110番 2本の後継樹の苗木が里帰り

(国研)森林総合研究所林木育種センターでは、わが国の貴重な林木遺伝資源の保存を図るとともに、これらを品種改良等に活用することを目的とした林木ジーンバンク事業を実施している。この事業の一環として、各地の天然記念物や巨樹・名木等の収集・保存と併せて、所有者等の要請により後継樹を増殖するサービス「林木遺伝子銀行110番」を行っている。今回、このサービスを利用して増殖を要請され、さし木や接ぎ木により増殖し育てられた ①埼玉県深谷市の市指定天然記念物で枯死した「山茶花」、②栃木県芳賀町立芳賀東小学校の名木「好徳の松」の2つの後継樹の苗木が各地に里帰りすることとなった。

全国には、学校や神社など身近な場所で地元の人々に親しまれ、ふるさとのシンボルとなっている巨樹・名木等が数多く存在する。こうした巨樹・名木等は、長い年月にわたって風雪に耐え生育し続けているため、自然環境に対する適応性や抵抗性に優れている可能性が高く、林木遺伝資源としても貴重である。

このため、林木育種センターでは、天然記念物や巨樹・名木等の収集・保存を進めるとともに、こうした樹木が衰弱している等で所有者等からの要請により後継樹の苗木を増殖し、里帰りを行うサービス「林木遺伝子銀行110番」を平成15年から実施している。これまでに全国の170本以上の巨樹・名木等の後継樹の里帰りを実施している。後継樹の苗木は、さし木や接ぎ木で増殖したクローンの苗木であり、親木と同じ遺伝子を持っているため、二代目として大きく成長することが期待される。

 

今回里帰りする後継樹2

埼玉県深谷市の指定天然記念物に指定されていた「山茶花」この木は、昭和35年の指定当時の樹高が13m、推定樹齢400年で、サザンカとしてはかなりの大きさの古木であったが、現在は枯れてしまっている。

林木育種センターは、平成24年5月に市の教育委員会からの後継樹の増殖の依頼を受け、同年6月に穂木を採取してさし木増殖を行った。その結果、4本の苗木を育成することに成功し、今回、30cm度に成長した苗木1本が6月24日に地元に里帰りすることとなった。

栃木県芳賀町立芳賀東小学校の名木「好徳の松」この木は、樹高約5m、推定樹齢150年のクロマツで、芳賀東小学校の敷地内に生育している。好徳の松という名前は、明治初期にこの場所に開校されていた芳賀東小学校の前身である「好徳館」が由来。地元ではこの名前で親しまれているが、根元部の空洞化が進んでおり、治療が施されている。

林木育種センターは、平成25年11月に町から後継樹の増殖の依頼を受け、平成26年2月に接ぎ木増殖を行った。その結果、5本の苗木を育成することに成功。今回、50cm程度に育った苗木2本が6月28日に芳賀東小学校に里帰りすることとなった。


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