2017年6月22日 東工大スパコンが世界1位 「省エネランキング」で 産総研は3位に 

東京工業大学と産業技術総合研究所でそれぞれ保有するスパコンが、世界のスパコンの省エネ性能ランキング『グリーン500リスト』で1位と3位を獲得した。ドイツ・フランクフルト市で開かれたスーパーコンピューターに関する国際会議「ISC 2017」で6月19日に発表された。今回の栄えある成果は、今年2月20日に設置された「産総研・東工大 実社会ビッグデータ活用オープンイノベーションラボラトリ」(RWBC‐OIL)での研究協力によるもの。

 

8月稼働予定「TUBAME3.0」

東工大では、学術国際情報センター(GSIC)が今年8月に本格稼動予定のスーパーコンピューター「TSUBAME3.0」が、『グリーン500リスト』の2017年6月版で、実際に運用するスパコンとしては日本で初めて世界トップに輝いた。

また、産総研では、人工知能研究センター(AIRC)が今年4月に稼働を開始したクラウド型計算システム「産総研AIクラウド」(AAIC)が、『グリーン500リスト』で世界3位となった。

東工大と産総研は長年にわたり高性能計算技術・省電力計算技術・ビッグデータ計算技術などの分野における研究協力を続け、RWBC‐OILを設置して本格的な活動を開始している。東工大と産総研の計算プラットフォームが世界1位と3位という好成績を獲得できたのはRWBC‐OILによる省エネ型高性能計算プラットフォーム構築技術など両機関の研究協力が加速できたことによるもの。

東工大のTSUBAME3.0は、2010年から〝みんなのスパコン〟として国内外の産学官の研究開発を支えてきたTSUBAME2.0/2.5の後継機。設計・開発・運用準備は東工大GSICが日米の企業等と協同で進めており、人工知能(AI)やビッグデータ分野で有効な計算処理精度では国内最大級の性能を誇り、また、コンピュータそのものと冷却システムの双方が世界トップレベルの省エネ性能を有している。特に、「1.0」に近いほど電力効率が良いとされる冷却効率を示す指標で、「1.033」(推測地)と極めて高い効率となる数値をたたき出した。

これらの設計には、東工大GSICが推進してきた文科省「スパコン・クラウド情報基盤におけるウルトラグリーン化技術」や「スマートコミュニティ実現のためのスパコン・クラウド情報基盤のエネルギー最適化の研究推進」などのプロジェクトの研究成果が活用されている。これらのプロジェクトによるテストベッドスパコン「TSUBAME‐KFC」は、2013年・2014年に『グリーン500リスト』で世界1位を獲得している。

 

長年の研究協力が成果に

今回の結果について東工大などでは、両機関における長年の多岐にわたる大規模計算機の省エネルギー化に関わる研究成果が結実したものと評価している。

東工大では、文科省プロジェクトだけでなく、科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業(JST‐CREST)「EBD:次世代の年ヨッタバイト処理に向けたエクストリームビッグデータの基盤技術」や「ULP‐HPC 次世代テクノロジのモデル化・最適化による超低消費電力ハイパフォーマンスコンピューティング」などの基礎研究プロジェクト、また米国企業との数年来の共同研究プロジェクトで、最新技術であるGPUのスパコンにおける活用や高性能計算システム(HPCシステム)の省電力化の研究などが続けられてきた。

また、産総研ではNEDO「グリーンネットワーク・システム技術研究開発」で得られた電力モニタリングに応じたサーバー運用技術の適用、さらにRWBC-OILによりGPUベースの計算プラットフォーム構築に関する相互の技術共有が加速された。これらを総合することで今回の世界でトップクラスの実用に供される省エネなシステムの実現という成果につながった。

この成果は産総研に今年度導入予定の「AI橋渡しクラウド」の構築で活用される。今後両機関は、RWBC‐OILで、TSUBAME3.0と産総研AAICを相互に活用しながら、ビッグデータ活用のためのシステム連携技術や大規模データ解析技術の研究を行うとともに、運用から発生する課題をハードウェア構築技術の高度化研究に活かすこととしている。

さらに、RWBC‐OILでの研究活動を通じて、両機関の技術融合による実社会ビッグデータの活用基盤の構築を行い、人工知能を含むビッグデータ処理技術・省エネ技術などの実社会への応用を目指す。


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