2019年2月13日 東大研究室がモバイルアプリ開発 視覚不自由な人の衣服品ショッピングを支援

東京大学大学院工学系研究科電気系工学専攻矢谷研究室は、視覚が不自由な人の衣料品・服飾品ショッピングを支援するモバイルアプリを研究開発している。利用者の付近に購買興味のある商品があるかを、スマートフォンの振動と音声によって提示。また、商品につけられた電子タグを利用することで、商品の詳細情報を聞くことが可能となっている。開発されたモバイルアプリは利用者と商品との距離に応じて提示する情報が変化するようになっており、視覚が不自由な方が目的の商品を探すだけなく、手助けなしには難しいさまざまな商品に触れて回る、あるいは店先に置かれている最新の商品の情報を手軽に得ることを支援する。近い将来、視覚が不自由な人も、他人の手助けなく自分自身で気軽に買い物ができるようになることが期待される。

 

商品に近づくと情報提供

視覚が不自由な人にとって実店舗での衣料品・服飾品ショッピングは手助けなしには難しい行動の一つ。実店舗でのショッピングでは、購入を考えている商品を探すことが難しいだけなく、店舗に並んでいる商品をざっと眺めることができないために、他に興味が持てる商品があっても気が付かない、または、最新のファッショントレンドを陳列されている商品を通して知ることができないなどの問題点が事前調査を通して明らかとなった。

開発中のモバイルアプリは、ビーコン技術により位置認識技術と電子タグによって、利用者が持つスマートフォンと商品の大まかな距離、位置関係を計算し、その遠近に応じて利用者に提示する情報を動的に変更する。具体的には、商品に近づくほどにより詳細な情報(例えば、価格、素材など)を得ることができる。このようにすることで、興味のある商品に近づくまでは提示される情報の量を抑えることができ、店舗内の歩行などを阻害しないように設計されている。

利用者は、モバイルアプリのサービスが提供されている店舗内でアプリを起動し、店舗内を散策すると、あらかじめ記録していた購入したい、あるいは好みの衣料品・服飾品に近づいたところで、振動により通知。このとき、利用者は電話をかけるような仕草をすることで、その商品の大まかな情報を得ることができる。

さらにその商品に近づくと振動がより強くなり、利用者に近づいていることを知らせる。商品を手にとってスマートフォンに接続されているタグリーダーをかざすと、商品の細かい情報を音声で得ることが可能。

また、スマートフォンに接続されているタグリーダーを左右に動かし、商品棚に置いてある複数の商品をスキャンするようにすると、それら商品の種類、色や形を簡潔にまとめた情報がシステムから提示される。このシステムの開発により、支援なしでは難しいとされていた棚全体のおおまなかな商品の傾向を知ることが可能となる。

現在、モバイルアプリのプロトタイプが完成しており、(株)髙島屋の協力の下、日本橋髙島屋婦人靴売場で、モバイルアプリの実証実験を1月下旬に実施。実店舗での同モバイルアプリの有効性、さらにショッピング経験がどのように向上するかを、視覚に不自由がある実験参加者とともに検証した。

矢谷研究室では、多様性のある社会を実現する上で、ビーコンを用いた位置認識やタグなどに代表されるIoT技術がどのように応用されるべきかを研究している。特にこの研究では、視覚に不自由がある人の実店舗におけるショッピングという社会的活動を支援することを目指しており、実証実験によって得られる知見は、今後の支援システムの設計に大きな意味を持つものと考えられる。

また、実証実験を通してシステムの有効性を検証するだけなく、インバウンド顧客など新たな利用者への展開を検討する予定。


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