2021年9月8日 東京住宅街のCO2減少 緊急事態宣言発令で自動車由来が大幅に

国立研究開発法人産業技術総合研究所などの研究グループの解析結果によると、2020年4‐5月の緊急事態宣言期間における東京・代々木街区の二酸化炭素(CO2)排出総量は、例年と比較して約20%低下し、主要因は自動車などの石油消費の約40%減少で、一方で外出自粛の影響により都市ガス消費が約20%増加したことがわかった。CO2排出量の長期観測が「ゼロエミッション」に向けたエネルギー消費構造の変化を評価する有効なツールになる得ることを示すものとして注目を集めている。

わが国では2050年までにCO2などの温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラルを目指すことが宣言された。産総研においては、ゼロエミッション国際共同研究センターを中心としてCO2削減技術の開発と社会実装に向けた取り組みを進めている。一方、新型コロナウイルスのパンデミックに伴う経済活動の停滞により、世界各国のCO2排出量が2020年前半に減少したことが報告されている。

わが国でも新型コロナウイルス感染拡大防止のため、複数回の緊急事態宣言が発出された。リモートワークの普及が、自動車由来のCO2排出量の減少などにより、CO2削減技術の実装時と類似した形で都市域の化石燃料種ごとのCO2排出量を変化させている可能性がある。

産総研は、防衛大学校とともに2012年より東海大学代々木キャンパス内の観測タワーで、大気中のCO2濃度と酸素(O2)濃度の高精度観測を行っている。観測データを基に、大都市のCO2排出量を燃料種別に評価する手法を開発してきた。今回はこの手法を緊急事態宣言発令に伴うCO2排出量の変化に適用した。

具体的には、代々木街区のCO2総排出量とその内訳について、第1回の緊急事態宣言が発出された2020年4-5月と、比較対象として2016年、2017年および2019年の同月について解析し、緊急事態宣言が東京住宅街のCO2排出量に及ぼした影響を評価した。

緊急事態宣言期間のCO2排出量は例年に比して日中に顕著な減少傾向を示し、夜間は同等だった。要因は、主に自動車由来と考えられる石油消費量の1日を通じた減少と、夜間の都市ガス消費量の増加だった。

この結果は、代々木街区近郊の自動車交通量の統計データに見られる傾向と整合的で、外出自粛による居住人口の変化を考慮した都市ガス消費量の推定結果とも概ね整合的だった。また、国立環境研究所が同時に観測している一酸化炭素(CO)とCO2の関係も、緊急事態宣言期間中の自動車由来のCO2排出量の減少を支持する結果だった。

海外の研究例でも、2020年のロックダウン時に自動車由来のCO2排出量が大きく減少したことが報告されており、わが国の緊急事態宣言も、東京住宅街のCO2排出量に対して影響を及ぼしたことが明らかになった。

産総研によると、今回の研究で用いた手法により、自動車の電動化が大規模に推進された場合のCO2削減効果を、観測点を中心に半径500mから1km以内程度の街区スケールにおいて大気観測に基づいて検証できるという。


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