2016年6月22日 日本の高校生、高い危機管理意識 国立青少年機構が日米中韓4ヵ国調査

わが国の高校生は、地震や台風といった自然災害に対する関心は高い一方、野外体験が少なく、さらに積極性と判断力が低い―。国立青少年教育振興機構が「高校生の安全に関する意識調査―日本・米国・中国・韓国‐比較」で、このようなわが国高校生の現状が明らかになった。わが国高校生の特徴をはっきりさせるために、米国・中国・韓国の高校生に関しても、比較対象として調査。中国は食品被害が大きな社会問題となっていることから「食の安全確認」、韓国はセウォル号の沈没事案など「建築物の安全の問題」への関心が、それぞれ他の3ヵ国に比べて高くなっている。また、米国は言うまでもなく銃の規制が大きな社会問題となっている。調査結果は次のとおり。

 

□少ない「けが」や事故の経験

調査によると、階段からの落下や蜂に刺されるなど、事故を経験した者の割合が高かったのは、総じて米国の高校生。70%が「階段から落ちた」、56%が「蜂や毒虫に刺された」経験を有するなど、事故関連の調査事例11項目のうち、7項目で最も割合が高かった。

一方、日本の高校生をみると、「擦り傷」「切り傷」を6割の高校生が経験したと回答している。

 

 □少ない被害経験

「仲間外れにされた」「目の前で悪口を言われたり、からかわれた」などの日常生活での被害経験が多いのは米国。日本が最も多いのは「目の前で悪口を言われたり、からかわれた」であるが、他の3か国と比べて最も少ない。

一方、「インターネットでIDやパスワードが盗まれた」「インターネットで架空の請求を受けた」など、インターネット上での被害経験が多かったのは、中国。日本は「インターネットで架空の請求を受けた」が中国に次いで多いが、それ以外の被害経験は少ない。

 

 □高い危険回避意識

日本の高校生は、「海や山などでは、「立入禁止」のところに入らないようにする」「道路の信号を守るようにする」といった野外や交通の安全ルールを守る意識が高い。反対に、米国の高校生は、そのような意識が低い。中国の高校生は、食べ物の安全確認やホームページにむやみにアクセスしないなどの自己防衛意識が強かった。さらに、韓国の高校生は、来客の確認や短時間の外出でも鍵をかけるといった高い防犯意識がみられた。

 

 □高い自然災害への関心

日本の高校生は、「地震や台風などの自然災害の問題」への関心が最も高い。中国は「食品の安全の問題」への関心が際立って高く、韓国は「地域の治安の問題」への関心が4か国中最も高かった。

 

 □少ない野外活動やボランティア活動への参加

「この1年間、キャンプ、山登りやハイキングなどの野外活動をしたことがほとんどない」と回答した日本の高校生が6割弱で、4か国中最も高い。また、日本は「親は私に野外活動をすすめる」「親はいままで私とよく一緒に野外活動をしてくれた」「私は野外活動が好きだ」と回答した割合が4か国中最も低い。

また、参加したことのあるボランティア活動では、日本が多いのは「街や公共施設の清掃」で、少ないのは「高齢者や体の不自由な人などの支援」。「ボランティア活動に参加したことがない」の割合が、日本は4か国中最も高い。

 

□低い積極性と判断力

「自分の意志を持って行動できるほうだ」「厳しい状況の中でも落ち着きを維持することができる」「世の中の出来事や、時事問題などに関心がある」に対して、「とてもそう思う」と回答した者の割合は、日本が4か国中最も低かった。

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「日本人は水と安全は無料」という意識があるが、現在の日本の高校生は、〝安全〟をどう思っているのか―。調査を中心になって行った同機構の明石要一青少年教育研究センター長(千葉敬愛短大学長)は、調査を行った理由をこう説明する。

「水と安全は無料」という言葉は、昭和45年に出版されたイザヤ・ベンダサン(山本七平)氏の著書『日本人とユダヤ人』で書かれたもの。明石センター長は、この言葉が世に出て46年が経過したこと現在、ネット被害からいじめや食品被害に至るまでさまざまな危険状況の時代を生きている今の高校生の安全観と危機管理意識を高めるために、この調査を行ったと説明している。


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