2020年6月15日 教育活動再開後の生徒指導 文科省、教職員らの積極的な対応を要請

緊急事態宣言の解除を受けて、学校教育活動の再開が本格化している中、文部科学省は、再開後の児童生徒に対する生徒指導上の留意事項を示している。この中では、①教育活動再開後の児童生徒の自殺予防に向けた取組の積極的な実施、②児童生徒の不登校に対する組織的な支援体制の整備、③児童虐待への組織的な対応、④児童生徒に対する差別や偏見への対応―などを要請している。

 

児童生徒の自殺防止

自殺対策白書で指摘されているとおり、18歳以下の自殺は、学校の長期休業明けにかけて増加する傾向がある。特に、新型コロナウイルス感染症に伴う長期にわたる学校休業においては、通常の長期休業とは異なり、教育活動の再開の時期が不確定であることなどから、児童生徒の心が不安定になることが見込まれる。そのため、これらの時期にかけて、学校として、児童生徒の自殺予防について組織体制を整え、取組を強化することは、児童生徒の尊い命を救うことにつながる。学校として、保護者、地域住民、関係機関等と連携の上、教育活動再開後の児童生徒の自殺予防に向けた取組を積極的に実施するよう求められる。

学校における早期発見に向けた取組として、自宅で過ごす児童生徒や保護者との連絡を密にし、心身の状況の変化や違和感の有無に注意し、児童生徒に自殺を企図する兆候がみられた場合には、特定の教職員で抱え込まず、直ちに校長等の管理職に相談・報告し、管理職のリーダーシップのもと、関係教職員がチームとして対応するとともに、教育相談員による観察や、保護者、医療機関などとの連携を図りながら組織的に対応することが求められる。

また、各学校において、感染症対策の徹底に留意しつつ、アンケート調査、担任やスクールカウンセラーによる個人面接などの教育相談を実施し、悩みを抱える児童生徒の早期発見・早期対応を組織的に行うことも併せて求められる。

児童生徒によるインターネット上の自殺をほのめかす書き込みを発見することは、自殺を企図して児童生徒を発見する端緒の一つ。教育活動の再開の前後において、平常時よりも実施頻度を上げるなどして集中的な実施が求められる。

 

児童生徒の不登校

不登校となる要因のうち、本人に係る要因として「不安傾向」が、学校・家庭に係る要因として「家庭に係る状況」が最も大きな割合を占めている。新型コロナウイルス感染症に伴う長期にわたる学校の休業により、学校再開後においても様々な不安やストレスを抱える児童生徒や、保護者の経済状況など家庭環境に変化が生じる児童生徒の増加が見込まれるという。

例えば、自宅学習の遅れによる学習面の不安や進学・進路への不安、楽しみにしていた学校行事の削減による気分の落ち込みといった心理的な影響が懸念される。また、保護者の収入が減ったことによる家庭の経済状況の変化や、長期の外出自粛による家庭内の不和といった家庭に係る状況の悪化も懸念されるところ。

このため学校再開後には、学級担任や養護教諭らを中心としたきめ細かな健康観察やストレスチェックにより、児童生徒の状況を的確に把握し、健康相談の実施やスクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーによる心理面・福祉面からの支援など、校長のリーダーシップのもと、教員だけでなく、さまざまな専門スタッフと連携協力し、組織的な支援体制を整え取り組むことが求められる。

 

児童虐待の増加や深刻化を懸念

新型コロナウイルス感染症及び蔓延防止のための措置の影響により、先が見えないことによる不安やストレスに加え、臨時休業により児童生徒や保護者の在宅時間が増加し、周囲の目が届きにくくなることから、児童虐待のリスクの増加や深刻化が懸念される。

そのため、学校再開後には、きめ細かな健康観察や健康診断の実施、児童生徒に学校休業中の状況の聞き取りやアンケート調査を行うなどにより、スクールソーシャルワーカーや関係機関による支援に確実につなげることが重要。迷いや疑義がある場合は市町村の虐待対応相当課に通告・相談するなど早期対応が求められる。


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