2018年3月2日 年間公開日数を大幅延長 文化庁が国宝・重文の取扱要項を改定

原則60日以内などとしていた公開日数を、油絵や金属彫刻、陶磁器などは年間延べ150日以内などに大幅に延長―。

国宝や重要文化財の公開に関する取扱要項の指針改訂を進めていた文化庁は、ワーキンググループ報告を踏まえ指針を改訂し、全国の都道府県・指定都市などに通知した。

従来、国宝・重要文化財の公開は、原則として公開回数は年間2回以内、公開日数は延べ60日以内、褪色や材質の劣化の危険性が高いものは延べ30日以内、照明は原則として150ルクス以内などと取扱要項に定められ、詳細については事前に文化庁に協議することとされていた。

こうした中、展示設備の技術的な進歩や公開ニーズの多様化などもあり、材質や保存状態などを踏まえ、き損の可能性の低い文化財は公開期限の延長を認めるなど、よりきめ細かな取扱とすることが望ましいとの指摘が行われるようになっていた。

社会的なニーズの高まりなどを背景に、昨年5月に文部科学大臣による諮問が文化審議会に行われ、これを受けて、文化審議会文化財分科会の下に企画調査会が設置され、専門家によるワーキンググループで保存と活用の在り方を検討。11月のWG報告が12月の文化審議会第1次答申に反映され、今年1月末に要項が改訂された。

改訂された要項によると、き損や劣化の程度が著しいもの、材質が極めて脆弱、寸法が特に大きい、形状が複雑なものを除き、原則として、①公開のための移動回数は年間2回以内、公開日数は延べ60日以内、②特に個々の保存状態に問題がない、材質が石、土、金属などで作られたものの年間公開日数:延べ150日以内、③特に個々の保存状態に問題がなく、特別な事情があり、事前に文化庁と協議の上、次回の公開まで適切な期間を設ける措置を取った場合の年間公開日数:延べ100日まで、ただし、④褪色や材質の劣化の危険性が高いものについては年間公開日数は延べ30日以内とする―との指針を示した。

また、絵画、彫刻、工芸、考古、書跡・典籍・古文書、歴史資料といった「個別の重文等の公開における留意事項」として、個々の保存状態に問題がなく、劣化しやすい材質を用いていない文化財に限るものの、次のように定めている。

★絵画:絵画の照度は100ルクス以下とする。版画の公開日数は年間延べ30日以内で照度は50ルクス以下とする。油絵の公開日数は年間延べ150日以内とする。

★彫刻:金属製品の公開日数は年間延べ150日以内とする。単一素材の彫刻作品(一木造り、彩色・漆箔などがない場合)の年間公開日数については事前に文化庁文化財部美術工芸課と協議した上で決定することができる。

★工芸:陶磁器、銅製品などの工芸品公開日数は年間延べ150日以内とする。漆工品、甲冑類の照度は100ルクス以下とする。染織品の照度は80ルクス以下とする。

★考古:材質が石、土、ガラスまたは金属のものの公開日数は年間延べ150日以内とする。

★書跡・典籍・古文書:照度は100ルクス以下とする。

★歴史資料:近代の洋紙を利用した文書・典籍類、図面類、写真類などの照度は50ルクス以下とする。


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