2016年11月15日 年間で肺に150個の遺伝子変異 1日1箱の喫煙で、がんセンター

国立がん研究センターをはじめとする日英米韓の国際共同チームはこのほど、毎日1箱のたばこを吸い続けることによって、肺の遺伝子に年間で平均150個の突然変異が起こるという研究結果を発表した。成果は3日付の米科学誌「サイエンス」に掲載されている。

チームは、喫煙との関連が深いとされている17種類のがん5243症例分を解析し、喫煙者と非喫煙者で比較した。

その結果、喫煙者では肺がんのおよそ半数を占める腺がんや咽頭がん、口腔がん、膀胱がんなどで遺伝子の突然変異が増加していた。たばこを毎日1箱吸う場合、年間の遺伝子変異の数は、肺がんが150個で最も多く、喉頭が97個、咽頭が39個、口腔が23個、膀胱が18個、肝臓が6個などと推計されている。

 

■ 3パターンの変異を確認

また、遺伝子が変異するパターンを調べた結果、喫煙によって発がんリスクが上昇するがんには少なくとも3つのタイプが存在することも判明。具体的には、たばこに含まれる発がん物質の暴露が直接的に突然変異を誘発しているタイプ(例:肺がん、喉頭がん、肝臓がん)、たばこに含まれる発がん物質の暴露が間接的に突然変異を誘発しているタイプ(例:膀胱がん、腎臓がん)、今回の解析で明らかな変異パターンの増加が認められなかったタイプ(例:子宮頸がん、膵がん)の3種類だ。

研究結果を受けて、チームは「喫煙が遺伝子の突然変異を誘発していることを再確認。がんの予防における禁煙の重要性が強調された」と主張。さらに、「今後、喫煙がどのように間接的な突然変異を引き起こすのか詳細に分析することによって、がんの予防法や治療法の開発に結び付けたい」としている。

 

■ 喫煙者のがんリスク 男性2倍 女性1.6倍  

たばこに含まれる発がん物質は約60種類。その多くは、体内の酵素で活性化された後、DNAと結合し、遺伝子の変異を引き起こす。これらが、がん遺伝子やがん抑制遺伝子などに蓄積することによって、細胞ががん化すると考えられているが詳しいメカニズムなどはわかっていない。

喫煙については、世界保健機関(WHO)が、がん発症の原因になると結論付けているほか、吸っている年数の長さや1日の量、開始した年齢などでリスクが高まると指摘。喫煙者ががんで死亡するリスクは日本の場合、吸わない人に比べて男性で2倍、女性で1.6倍にのぼることがこれまでの研究でわかっている。

がん種別にみると、男性では喉頭がん、尿路がん、肺がんで5倍前後と高く、女性では肺がんで4倍、子宮頸がん、口唇・口腔・咽頭がんで2倍以上となっている。

喫煙は、がんの原因の中でも予防可能な最大の原因だが、日本でのがんの死亡のうち、男性の40%、女性の5%は喫煙が原因と考えられている。特に肺がんは喫煙との関連が強く、肺がんの死亡のうち、男性の70%、女性の20%は喫煙が原因と考えられています。


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