2020年6月4日 対話支援と事故事例検索で安全な農作業現場へ 農作業安全のツボを教えるコンテンツをウェブ公開

農研機構は、研修担当者が生産現場で効果的に農作業安全研修を行える「対話型研修ツール」と、誰もが様々な事故事例と原因・対策を学べる「農作業事故事例検索システム」を公開・提供した。

農作業事故を減らすためには、操作ミスなどの人的要因だけでなく、「機械・用具等」、「作業環境」、「作業・管理方法」の各要因に対して具体的な改善を行う必要がある。今回提供が開始された二つのコンテンツは、こうした状況を受け、地域の農作業安全研修の担当者や生産者自身が、現場の改善によって、単なる注意喚起にとどまらず、実効性のある安全対策を実現するためのサポートツールとして開発された。

「対話型農作業安全研修ツール」は、生産現場の実態に合った効果的な改善策を考えるためのコンテンツ。農業法人等の小集団を対象に、あらかじめ参加者の〝ヒヤリハット経験(仕事をしていて、もう少しでけがをするところだったなど、「ヒヤッとした」、「ハッとした」経験)〟を調べ、回答が多かった項目や実際の事故事例について、研修担当者と参加者で話し合い、実践可能で効果的な改善策を検討できる。検討材料として改善策一覧表も準備されている。

「農作業事故事例検索システム」では、様々な農作業事故の事例から、身の回りや地域で起き得る事故を見つけ、原因究明や改善策に役立てることができる。

いずれもサイト「農作業安全情報センター」で利用・ダウンロードできる。

 

農作業死亡事故を詳しく調査・分析

農作業死亡事故は、2018年には全国で274件発生している。これは就業者あたりの死亡事故発生割合でみた場合、他産業と比較して大変多く、長年大きな問題となっている。そこで、農研機構では、2011年度より複数の道県と連携して農作業事故を詳しく調査・分析し、効果的な対策につなげる研究を行ってきた。

研究では、様々な農作業事故の原因を、①機械・用具・施設等に関するもの、②作業環境に関するもの、③作業・管理方法等に関するもの、④ミスや年齢など人に関するものに分類し、問題点を分析した。その結果、農作業事故はこれら四つの原因のいくつかが重なって発生しており、④の人的要因だけで起きた事故はほとんどなかった。労災対策で先行する他産業と同様に、農作業安全対策でも、単なる注意喚起にとどまらず、「機械・用具等」、「作業環境」、「作業・管理方法」の各側面から、現場ごとに問題点を見つけ出し、具体的な改善を行う必要があることが示された。

 

これまでの取組から一歩進む

農業では、他産業に比べ、公開された事故事例が少なく、詳しい原因が分からなかったものも多かったため、従来の取組は「気をつけよう」の注意喚起など、人的要因に対する啓発が主流だった。また、チラシや学校形式の研修会など、一方通行型の取組がほとんどである。

このため、農研機構は、これまでの取組から一歩進んで、「機械・用具等」、「作業環境」、「作業・管理方法」の各側面から実効性のある安全対策を実現するためのサポートツールとして、「対話型農作業安全研修ツール」と「農作業事故事例検索システム」の二つのコンテンツを開発した。

 

コンテンツそれぞれの特徴

【対話型農作業安全研修ツール】

農業法人等の小集団を対象として、生産現場ごとに、研修担当者と参加者が対話しながら効果的な改善策を考えるためのコンテンツ。乗用トラクターなど10種類の機械・用具におけるヒヤリハット経験をアンケート調査する「事前調査票」、ヒヤリハット経験ごとに「機械・用具等」、「作業環境」、「作業・管理方法」の各側面から改善策の例を分類した「改善策一覧表」、「活用マニュアル」の3点で構成されている。

研修担当者は、「事前調査票」で参加者のヒヤリハット経験を調べ、回答が多かったものや実際の事故事例について、「活用マニュアル」を参考に、研修担当者と参加者で話し合いながら、具体的な現場の改善策を検討する。検討には、「改善策一覧表」をアイデア集として活用できる。従来の一方通行型ではなく、対話を通じて参加者からも意見を出してもらうことで、実践可能で効果的な改善策の検討につなげることができる。

【農作業事故事例検索システム】

北海道農作業安全運動推進本部と連携して詳細な現地調査を行い、「人」、「機械・用具等」、「作業環境」、「作業・管理方法」の各側面から原因や改善策を分析した事故事例をウェブ上で検索できる、農研機構が開発したシステム。作目別の事故一覧から、事故形態や機械用具名称で絞り込み、該当する事故報告を見つけることができる。

コンテンツの積極的な活用に期待

両コンテンツともウェブサイト「農作業安全情報センター」内で公開されているが、農研機構では今後、農作業事故調査で連携している道県を中心に、引き続きこれらを活用した農作業安全活動に取り組む予定だ。

また、研修ツールの「事前調査票」と「改善策一覧表」は、編集可能な表計算ファイル形式で提供されている。研修担当者は地域の実情を踏まえて項目の取捨選択や追加を行い、地域版ツールを作ることもできるため、積極的な活用が期待される。


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