2018年3月6日 好むのは「同じになる分配」 神戸大准教授が「平等な分け方」で調査

神戸大学大学院人間発達環境学研究科の林 創(はじむ)准教授は、幼児(5~6歳)と大人を対象に、人々が持つ〝平等な分配への好み〟を深める調査を実施し、幼い頃から「分け方が同じになる分配への好み」よりも「結果が同じになる分配への好み」が強いことを明らかにした。この研究成果は、1月26日に、発達心理学の国際学術雑誌「ヨーロピアンジャーナル・オブ・ディベロップメンタル・サイコロジー」に掲載された。

限られた物資をいかに分配するかは、人間の社会性や道徳性に直結する重要な問題。これまでの発達心理学の研究から、幼児期の5~6歳頃に、子どもは不平等な分配(自分の方が多い、もしくは相手の方が多い)よりも、平等な分配(相手も自分も同じ)を好むようになることが明らかになっている。

しかし、これらの知見では、自分と相手の二者とも何もない状態から分配が始まるため、「平等な分配」への好みが「分ける数量が同じ」ことへの好みを意味するのか、それとも「結果が同じ数量」への好みを意味するのか不明だった。

そこで林准教授は、あらかじめ二者のどちらかだけが物資を持つ状況を作り出すことで、幼児と大人が、「結果が同じ分配」(すでに一方が持つ数量を考慮して、結果が同じになるように分ける)と、「分け方が同じ分配」(すでに一方が持つ数量を考慮せず、配分が同じになるように分ける)のどちらに好みを示すのかを明らかにすることを目的とした調査を実施した。

調査は5~6歳の幼児24人と大学生34人を対象とした。事前に飴玉が好きなことを確認し、ビー玉を飴玉とみなしてくれることを確認後に、参加者とパペット2体で、ビー玉の分配方法など条件を変えながら次のとおり調査を行った。

 

 □フェーズ1「事前に一方が持つ物資(赤いビー玉)」の操作

くじ箱を用い、参加者に抽選でビー玉を獲得してもらった。くじ箱のしかけにより、参加者が2個×2セットの赤いビー玉を獲得する「参加者条件」、あるいは、二つのパペットの各々が2個の赤いビー玉を獲得する「パペット条件」に分かれるようにした。各条件は3回ずつ(計6試行)割当たるようにした。

 

 □フェーズ2「新たな物資(青いビー玉)」の分配

各試行で、2体のパペットにそれぞれ新たな物資(青いビー玉)を分配させる。一方のパペットには、パペット自身と参加者に「結果が同じ分配」になるように青いビー玉を分けさせた。例えば、参加者条件では、八つの青いビー玉を、パペット自身が五つ、参加者が三つになるように分配し、結果的に五つと五つで同じ数にした。

次に、もう一方のパペットには、パペット自身と参加者に「分け方が同じ分配」になるように青いビー玉を分けさせた。こちらは例えば、参加者条件では、参加者がすでに持っている二つの赤いビー玉を考慮せずに、六つの青いビー玉をパペット自身も参加者もともに三つずつ均等に分配した。

二つのフェーズの調査を行った後、「どちらの分け方が好きか?」と参加者に尋ねた結果、「コスト無し」試行では、参加者条件とパペット条件でともに、大人も幼児も多数が「結果が同じ分配」の方を選んだ。ただし、幼児の場合、事前に自分が多く持つ参加者条件では、「分け方が同じ分配」を選ぶ割合がパペット条件の時よりも高くなった。また、大人も幼児も、「結果が同じ分配」を選ぶと自分の取り分が少なくなる「コスト有り」試行を含めて、全ての条件で「結果が同じ分配」の選択率が50%を上回った。

もし分配に好みの差がないのであれば、「結果が同じ分配」と「分け方が同じ分配」はどちらも同じ選択割合になるはず。ところが、このように大人も幼児もすべての条件で、「結果が同じ分配」を選択したことから、人間の多くは結果が同じになる分配を好むことが明らかになった。同時に、先行研究での「平等分配への好み」とは、「結果が同じ分配への好み」のことを指していたことが判明した。


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