2022年6月1日 女性は年齢が高いほどに関心アップ 「食への価値観」初調査 男性とは逆に 

女性は男性よりも、食品選択での全ての価値基準に重きを置いているだけでなく、栄養に関する知識、料理技術、食全般に関わる技能のすべてが高い。また、高齢の参加者(60~80歳)は、食品選択に際して「長期志向型」の価値基準(オーガニック、安全性)を重視する一方で、若年(19~39歳)と中年(40~59歳)の参加者は「短期志向型」の価値基準(入手しやすさ、便利さなど)を重視していた―。

東京大学大学院医学系研究科社会予防疫学分野の村上健太郎助教、佐々木敏教授らの研究グループは、日本人成人2231人を対象に詳細な質問票調査を実施し、食品選択での価値基準、栄養知識、料理技術、食全般に関わる技能には、男女間、世代間で大きな差があることを明らかにした。

この研究では、有用性が確立している質問票を用いて、入手しやすさ、便利さ、健康、安全性といった食品選択での価値基準栄養に関する知識、料理技術、食全般に関わる技能を調べた。

調査ではさらに、男性では年齢が高いほど料理技術と食全般に関わる技能が低い一方で、女性では年齢が高いほど料理技術と食全般に関わる技能が高いという、男女でまったく逆の関連がみられたという。

日本人を対象に、食に関する価値観、知識、技術を包括的に測定した研究は今回が初の試み。研究グループでは、健康的な食事を目指した効果的な政策、教育・介入プログラムやキャンペーンの科学的な基盤となるとしている。

 

食行動形成要因への関心高まる

世界的な推定によると、食事は年間1100万人の死亡(総数の22%)の原因となっている。このため、食事の質の向上は、現在、世界的な優先事項となっている。より健康的な食事を実現するために、世界各国は〝何をどれだけ食べたらよいか〟に関するガイドラインを定めている。しかし、食事摂取に関連する個人の特性は複雑で多様であるため、〝画一的な〟食事ガイドラインだけでは、より健康的な食事を実現するのは難しいことがわかってきた。このため、食品の選択と食行動を形成する要因を調査し理解することが、より重要になっている。

このような流れのなかで、食品選択での価値基準、すなわち、個人がどの食品を購入・摂取するかを決定する際に考慮する要因に注目が集まっている。

また、最近になって提唱された概念として、フードリテラシーがある。フードリテラシーは、単に栄養の知識だけでなく、食べ物がどこから来るのかを知ることから、これらの食べ物を選択し調理する能力、食事ガイドラインを満たすように行動する能力まで、スキルや行動も含まれる。

村上東大助教らの研究では、フードリテラシーを、食に関する知識、料理技術、食全般に関わる技能(食事の計画と準備、買い物、予算の立て方、ラベルの読み方に関わる技能)で構成されるものと考えた。

食品選択での価値基準とフードリテラシーの測定と調査は、多くが欧米諸国で行われており、日本では科学的成果がほとんどないのが現状。日本人の食事は健康的であると広く認識されているが、最近の詳細な解析によると、日本人成人の全体的な食事の質は最適とは程遠く、日本と欧米諸国の間では栄養に関する懸念事項が異なることが示唆されている。

有効な食事ガイドラインや公衆衛生政策を策定し、健康的な食事を促進するための効果的な介入戦略を開発するためには、一般集団を対象とした包括的な報告が不可欠であるといえる。そこで研究では、全国調査データを用いて、食品選択での価値基準、栄養知識、料理技術、食全般に関わる技能について、性や年齢との関連を調べた。


株式会社官庁通信社
〒101-0041 東京都千代田区神田須田町2-13-14
--総務部--TEL 03-3251-5751 FAX 03-3251-5753
--編集部--TEL 03-3251-5755 FAX 03-3251-5754

Copyright 株式会社官庁通信社 All Rights Reserved.