2021年12月2日 土砂災害のリスク高い豪雨の特徴 住民の安全な避難計画の策定への貢献に期待

(国研)森林研究・整備機構森林総合研究所は、土砂災害が発生する危険性が高い豪雨の特徴を明らかにした。研究では、大規模な土砂災害を引き起こした豪雨を対象として、1時間あたりの平均雨量と災害が発生したタイミングの関係が調査されたが、その結果、平均雨量が100年に1度の確率の値に達した際に、土砂災害が発生する危険性が高いことが分かった。この結果は、平均雨量が100年に一度の値に達するかどうかを推定することで、土砂災害の発生する危険性が高い雨の降り方かどうかを判定できるというもの。豪雨時の住民の安全な避難計画の策定に貢献することが期待される。

近年、豪雨に伴って各地の山地斜面で土砂災害が発生しており、こうした災害に対する防災・減災技術の開発が急務となっている。災害の軽減には、警戒や避難が有効であるため、降雨データを用いて、土砂災害が発生する危険性をどのように判定するのかが重要となる。

しかし、土砂災害は様々な雨の降り方で発生するため、土砂災害の発生する危険性を判定する上で、どのような雨の情報が役立つかは詳しく分かっていなかった。

今回の研究では、平成24年7月九州北部豪雨や平成30年7月豪雨など、合計10事例を対象として、大規模な土砂災害を引き起こした雨の降り方について調査を実施した。

一例として、平成24年7月九州北部豪雨では、1時間雨量や3時間雨量、6時間雨量が災害発生前すでに100年に一度の雨量に達しており、直接災害の引き金となったのかどうかは不明確だった。一方で、12時間雨量が100年に一度の値に達したタイミングは、土砂災害の発生時刻とほぼ合致しており、災害の原因となった量のような短期間の雨量だけでなく、12時間を超えるような比較的長期間の雨の降り方も考慮する必要がある。

そこで研究では、1時間から72時間まで経過する時間を変えながら、各時間で100年に一度の確率の値に相当する1時間あたりの平均雨量を求めて、土砂災害を引き起こした降雨と比較した。

その結果、調べた全ての事例で共通して、1時間あたりの平均雨量が、その地域における100年に一度の値に達した際に、土砂災害が発生する危険性が高いことがわかった。

この成果は、土砂災害が発生する危険性が高い雨の降り方の判定に役立つことから、住民の安全な避難計画の策定に貢献することが期待される。

 

今後の研究のポイント

今回の研究により、大規模な土砂災害を引き起こす危険性が高い雨の降り方が明らかとなった。

一方で、雨量計の観測網でカバーされていない地域における局所的な豪雨は、正確な降雨量の測定が困難である。そのため、山間部においてゲリラ豪雨で発生するような、局所的で小規模な土砂災害の発生タイミングと雨の特徴の関係は明らかになっていない。

研究グループは今後、レーダー雨量などを用いることで、局所的な豪雨も比較対象に加えながら、雨が何年に一度の確率の平均雨量に達するのかという情報が、どのような規模の土砂災害の発生危険性の判定に有効なのか、詳しく調べていく必要があるとしている。


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