2018年1月25日 国立大の土木系学科新設は36年ぶり 今年4月、富山大に都市・交通デザイン学科が誕生

「コンパクトシティ」を都市政策として標榜する北陸・富山県富山市に所在する富山大学は、今年4月、都市デザイン学部「都市・交通デザイン学科」を新設する。土木工学を基礎とした理工系の学科で、国立大学での土木系学科の新設は1982年の宇都宮大以来36年ぶり。また、理系・文系を問わず、国公立大学で唯一「交通」の名がつく学科となる。

新設の都市・交通デザイン学科は、土木工学の基礎技術をはじめ、都市・交通計画、情報・データサイエンス、都市景観・デザイン、防災工学などを総合的に学び、都市や交通の将来を担う技術者を育成する。現在、1月31日まで願書募集中で、前期日程入試は、埼玉県・大宮会場や愛知県・名古屋会場でも実施する。

富山大は、都市デザイン学部を含め9学部で構成される日本海側有数の国立総合大学。持続可能社会を目指した先端的なコンパクトシティ政策が進められている富山に立地し、北陸新幹線開業で各地域からの利便性が格段に向上した。その上、新幹線駅からキャンパスまで路面電車で約15分の利便性があり、豊かな自然と地域を有する恵まれた研究フィールドが特徴だ。

新学科での学びは、1)災害に強く安全・安心で美しい都市をデザインするための知識を修得、2)経済・行政・社会の仕組みや都市の文化を理解し、都市や交通の計画を学ぶ、3)一級建築士などさまざまな国家資格や民間資格の受験資格が得られるほか、卒業することで技術史補と測量士補を取得できる―のが特徴。

日本の各都市を持続的に発展させるためには、都市の基盤を形作るインフラや防災の観点からのハード・ソフト両面の整備、地域活性化の観点からの地域資源の利活用やコミュニティ活性化が必要。

新学科では、人間の活動領域としての都市と交通を対象に、自然科学、工学技術、社会科学を基盤としながら、デザイン思考を通じた実践を行うことで持続可能な都市の実現に寄与できる人材を育成する。

授業は1年次から工学、理学、芸術文化学など多様なジャンルを連携・融合させながら、JABEEに対応した国際水準の教育プログラムで進めていくという。また、理論の学修だけでなく、公共交通を軸としたコンパクトシティ先進都市で知られる富山の街をフィールドとした演習を多く取入れ、より具体的、実践的な教育を行っていくとしている。

富山市は、少子高齢化や地域活力の低下など現代日本の他都市と同様の課題に直面しながらも、全国に先駆けて公共交通を軸とするコンパクトなまちづくり実践してきた。その成果は国内外で非常に高く評価され、政府の「環境未来都市」や「環境モデル都市」に選定されているほか、国連の「エネルギー効率改善都市」や米国ロックフェラー財団の「レジリエント都市」にも国内の最初の選出を受けている。

日本の国土は、地震・津波・台風・洪水などの自然災害を受けやすく、防災は重要な国土政策。一方、東京一極集中の現状や大都市圏が太平洋側に集中立地していることから、首都直下型地震や南海トラフ地震などの大規模災害が太平洋側に発生した場合の国土の脆弱性が指摘されている。こうした危険に対して、交通・物流機能や産業・行政機能を日本海側にもバックアップしておくことは重要。大規模災害の打撃を受けても、国土全体として支え合う国土づくりが期待される。

富山大では、「富山のように、現代の多くの都市が抱える問題に直面しながらも先進的な取り組みで成果をあげている都市でこそ、これからの時代のあるべき都市像を学べる」と新設する都市・交通デザイン学科をアピールしている。


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