2016年6月28日 善玉菌が少ないとうつ病リスク高い NCNPとヤクルトがビフィズス菌数などを比較

国立精神・神経医療研究センター神経研究所(NCNP)とヤクルト中央研究所の共同研究グループは、うつ病患者と健常者の腸内細菌について、善玉菌のビフィズス菌と乳酸桿菌の菌数を比較調査したところ、うつ病患者は健常者に比べ、ビフィズス菌の菌数が有意に低く、ビフィズス菌・乳酸桿菌ともに一定の菌数以下という人が明らかに多いことを明らかにした。研究結果を踏まえヤクルト本社などでは、「善玉菌が少ないとうつ病リスクが高まる」と分析している。

現在、治療を受けているうつ病患者は70万人と推定されている。治療を受けていない罹患者はその3~4倍存在するとされ、うつ病は今や国民の健康をおびやかす重大な病気の1つともいえる。

うつ病の原因として、これまでに神経伝達物質の異常、ストレス反応における内分泌学的異常、慢性炎症などの生物学的な要因が提唱されてきたが、いまだに不明な部分が多いのが現状。しかも、うつ病患者を対象として腸内細菌の構成や菌数を健常者と比較した研究はほとんどなかった。

ヒトの腸内には100兆個、重さにして約1~1.5kg、1000種類以上もの腸内細菌が生息し、食物からの栄養素の吸収、ビタミンやタンパク質の合成、体外からの新たな病原菌の侵入の防止など、多岐にわたる重要な機能を担っている。近年、腸内細菌は脳の機能にも影響を与えることを示唆する研究結果が次々に報告され、うつ病の発症要因として注目されるようになってきた。

うつ病の動物モデルを用いた実験では、行動異常やストレス反応において腸内細菌の関与を示唆する報告が増え、ビフィズス菌や乳酸菌といったいわゆる善玉菌はストレス反応を和らげる可能性がある。また、健常者でのストレス症状に対するプロバイオティクス=生きた善玉菌を含む食品の効果も報告され始めている。

今回の研究では、100人の被験者のうち、はっきりとした原因がないのに下痢や便秘などの便通異常をともなう腹痛や腹部不快感が慢性的に繰り返され、不安やスチレスを感じると症状が強くなる疾患で、腸内細菌が関与している可能性が指摘されている「過敏性腸症候群」を合併している人の割合は、健常者では12%だったのに対し、うつ病者では33%と有意に多いことがわかった。

さらに、ビフィズス菌や乳酸菌を多く含む乳酸菌飲料やヨーグルトなどの摂取頻度と腸内細菌の関係を調べたところ、うつ病性障害患者の中で週に1回未満しか摂取しない人は、週1回以上摂取習慣がある人に比較して、腸内のビフィズス菌の菌数が明らかに低いことがわかった。

ストレス性心身症との関連や、乳酸菌飲料などの摂取量とビフィズス菌数との関連もみられたことから、NCNPとヤクルト本社では「今後は、他の菌との関係や、善玉菌といわれるプロバイオティクスを投与した介入研究に取り組み、効果を実証し新たなうつ病治療の開拓につなげていきたい」と今後の目標を示唆している。さらに「善玉菌を詳しく分類し、どのような種類の菌がうつ病に効果があるかについて解明していきたい」と今後の研究に自信を深めている。


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