2016年12月19日 光ファイバーセンサーを超高速化 社会インフラの劣化検出やロボットの神経利用に

東京工業大学の中村健太郎教授を中心とする研究グループは、光ファイバーの中の変形や温度をリアルタイムに検出するセンサーシステムを新たに開発した。

従来法の5000倍以上の超高速化を達成し、社会インフラの経年劣化や自然災害対策が大きな社会問題として浮上する中、ビル、トンネル、橋梁などに光ファイバーを「神経」として埋め込むことによって、構造物の変形を正確に監視できるという。ロボットの新たな神経としての応用も期待されている。

東工大科学技術創成研究院未来産業技術研究所の水野洋輔助教と中村健太郎教授が、日本学術振興会特別研究員PDの林 寧生博士、ファナック(株)サーボ研究所の福田英幸氏(元東工大中村研究室所属)、韓国中央大学物理学科の宋光容教授とともに、光ファイバー中の変形(伸び)と温度を検出できる分布型光ファイバーセンサーの性能向上に取り組んでいたもので、片端からの光入射とリアルタイム動作の両立に世界で初めて成功した。

わが国では、1960年代から70年代にかけての高度経済成長期に、集中的に建設された社会インフラの経年劣化が進んでいる。また、地震などの自然災害による損傷も蓄積して大きな社会問題に浮上してきている。

有力な対策として構造物に光ファイバーを埋め込むことで、構造物内を測定するシステムが使われつつある。長距離にわたって測定が可能なうえ、電磁ノイズに強いといった利点があり、注目を集めている。

特に、光ファイバー中の「ブリルアン散乱」と呼ばれる周波数シフトを用いた分布型の伸び・温度センサーは、他の手法に比べて高精度・高安定であることが知られている。中でも、ブリルアン光相関領域反射計と呼ばれる手法は、光ファイバーの片端から光を入射するだけでの動作、高空間分解能、低コストなどの利点を併せ持つ。すでに、1cm以下の分解能の実現など、多くの成果が得られている。しかし、「サンプリングレート」という光ファイバーの中にある1点の伸びや温度を1秒間あたりに測定できる回数は19ヘルツが最高で、分布測定に数十秒から数分かかるという問題があった。

研究グループでは、反射光の解析に「位相検波」という技術を導入することで、片端からの光入射による分布型光ファイバーセンサーの超高速化に成功。光ファイバー中の任意の位置での伸びや温度変化を、1秒間に10万回測定できる100キロヘルツものサンプリングレートを達成した。これは従来法の5000倍以上の速度だという。

 

ロボットの神経利用にも期待

今回の画期的な手法の開発は、伸び縮み(振動)や温度変化の分布情報を片端からの光入射でリアルタイムかつ高空間分解能で取得できるため、ビル・橋梁・トンネル・ダム・堤防・パイプライン・風車の羽根・航空機の翼などさまざまな構造物に関わる防災・危機管理技術として幅広く活用することができる。

また、アームに巻き付けることで、任意の位置で接触や変形、温度変化を検出するロボットの新しい神経としての応用も期待できるという。


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