2021年2月26日 伝え方の差で2割異なる希望率 関西大が新型コロナワクチン接種前に調査

同じデータを左右どちらから見るかで、まったく正反対の事実を読み取れるケースがあるが、新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種に関する説明では、こうした点をより注意して取り組む必要がありそうだ。関西大学ソシオネットワーク戦略研究機構(RISS)が行った調査によると、同じ事実の説明でも、わずかな伝え方の差でワクチンの接種希望率が2割近く異なることが明らかとなった。調査での質問事項や聞き方が与える回答への影響は、これまでも世論調査などで問題となっている。ワクチン接種は本人の意思で行うべきものであり、接種に関する質問事項はある方向に誘導するものではなく、率直であるべきだ。

 

「95人に効いた」と「5人に効かない」

日本国内でも新型コロナウイルス感染症に対するワクチンの接種開始が、医療関係者から始まった。今後、高齢者、疾患を持つ人々、さらに一般の国民とワクチンを打つこととなるが、多くの人々が自ら摂取するか否かを判断する機会が到来する。また、他人に接種意向を尋ねる立場となる人々も多数存在することとなる。

RISSの調査では、人々の新型コロナワクチンの接種意向が、ワクチンに関する説明によって受ける影響を見極めることを目的に実施したもの。そのなかで、ランダム化比較試験の手法を用いて、説明の中身や伝え方を変えたさまざまな質問に対する人々の接種意向を分析した。

特に情報を与えずに、単純に「あなたは新型コロナワクチンを、打ちたいと思いますか」と尋ねたところ、58.2%が接種を希望。また、「ある町で、100人の新型コロナ患者が出たとします。もし、この100人があるワクチンを打っていたら、95人は発病を防げたことがわかっています」と、この質問に有効率に情報を付け加えて、質問。その結果、接種希望率は76.0%と、2割近く上昇した。

さらに、RISSでは、同じ情報ながら否定的な表現を用いた際の接種希望率に関しても調査した。「もし、100人があるワクチンを打っていたとしても、5人は発病を防げなかったことがわかっています」。情報の実質的な内容は接種希望率76%のケースと同じであるのにも関わらず、接種希望率は65.9%と大幅に減少した。

 

 割合よりも実際の数字にインパクト

また、副反応に関する情報を加えた際の接種希望率も確認した。「0.02%の割合で、副作用かもしれない重い症状が出たこともわかっています」とすると、接種希望率は64.4%に下がった。

副反応に関する情報を、パーセンテージではなく人数で表現し、「10万人のうち20人の割合で、副作用かもしれない重い症状が出たこともわかっています」としたところ、〝0.02%の副作用〟と、情報の実質的な内容はほぼ同じであるのにも関わらず、接種希望率は57.8%にダウンした。

ワクチンの有効性を肯定的な表現から否定的な表現にすると、接種希望率は10ポイント減少。説明の内容が同じであるにも関わらず、副反応の割合をパーセント表示から人数表示に変えるだけで、接種希望率は6.6ポイント減少する。

このように伝え方が変わるだけで人々の接種意向が変化することがあらためて証明された形となり、RISSでは、「肯定的な表現と否定的な表現、さらにパーセント表示と人数表示が人々の判断に影響を与えるという結果は重大」と意義を強調。こうした結果を利用して、特定の方向に人々の接種意向を操作しようとすることは決して望ましくないとし、副反応の説明の際には、パーセントと人数の両方を示して、これらが同じ意味であることを伝えるなどの配慮が必要としている。


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