2020年4月8日 人口減少による住宅資産デフレ40兆円 東京圏でも影響あり 1世帯当たり1000万円消失

東京圏の人口減少による住宅資産デフレは30年間で最大約40兆円。1世帯あたり500~1000万円の住宅資産が消失する可能性大―。2015年から2045年の30年間で、東京圏であっても人口減少が地価の下落を招き、住宅資産は減少し、特に都心へのアクセスが1時間以上の東京圏郊外部では、住宅資産デフレがより顕著になることが、東京都市大学教授による分析で浮き彫りとなった。高齢者世帯の家計資産に占める不動産比率は約6割と高いことから、老後生活へのインパクトも懸念される。

この分析を発表したのは、東京都市大都市生活学部の宇都正哲教授。2015‐45年の30年間で、東京圏の住宅資産価値が、最大約40兆円下落する可能性があることを明らかにした。

わが国での人口減少の影響の一つに、〝資産デフレ〟が挙げられるが、個人資産では住宅等の不動産が占める比率が高いとされていることから、住宅は老後生活での貴重な資産となっている。

今回、各自治体や国が公表している住宅地の面積と平均地価に基づき、東京圏の2045年までの30年間の資産価値の変化を試算したところ、資産価値が上昇する都心部と下落する郊外部で格差が拡がり、住宅資産デフレの影響が顕著に現れた。1世帯あたりでは500万円から1000万円の住宅資産が失われる可能性があると指摘する。

こうした傾向により、人口減少による住宅資産デフレは、地方部だけの問題ではなく、東京圏にも大きく影響し、今後、老後の居住地選択における制約や金銭的不安などといった社会問題を引き起こす可能性がある。

 

老後の金銭的不安浮き彫りに

わが国は人口減少がすでに始まっている。ピーク時である2010年の1.3憶人から2065年には8800万人まで減少すると推計されており、先進国でこれほど急激な人口減少と少子高齢化を経験した国は、他に例を見ない。人口減少はさまざまな側面に影響を与えると考えられるが、地価に与える影響も大きく、なかでも生活の基盤である住宅資産への影響は人々の身近な暮らしにとって重要なポイントとなっている。

将来における人口減少によって、2045年までの30年間に、資産価値の上昇する都心部と下落する郊外部で格差が拡がる。96の自治体で2割以上資産価値が下落することが予見されるなど、特に東京圏郊外部では、資産デフレの影響がより顕著に現れる。

東京都心ターミナル駅までのアクセス時間が1時間以遠の自治体では30年間に3割以上の住宅資産価値が下落。そうなると、自宅を売却し、自分の好きな地域へ転居したり、介護付き有料老人ホームの入所一時金に充当したりといった選択が困難となる可能性があるという。

 

「永住」しかない選択肢

特にわが国では、個人資産のうち不動産が占める比率が高齢者ほど高いため、年金とともに自宅の不動産も老後生活での貴重な財産と位置づけられている。このため、住宅資産デフレを顕在化しない方法を採る人々が増加する。

すなわち永住するという選択肢で、介護が必要となっても在宅介護を依頼し、転居したい事由があってもその場に住み続けるしかない。宇都教授は、このように、人口減少に伴う住宅資産デフレは、地方部だけの問題ではなく、東京圏であっても老後の居住地選択の制約、住宅資産価値の下落による老後生活の金銭的不安などといった社会課題を引き起こす可能性があると、分析している。

人口減少に伴う住宅資産デフレは、地方部だけの問題ではなく、東京圏であっても老後の居住地選択の制約、住宅資産価値の下落による老後生活の金銭的不安などといった社会課題を引き起こす可能性があるということを指摘したことが研究成果の一つ。

宇都教授は、今後の課題としては、東京圏以外での住宅資産デフレの影響を試算し、日本全国を相対的に比較できるよう地域を追加する方針。また、高齢者世帯に与える影響については、より精緻に影響を解明できるよう実態研究を追加していくことが重要としている。


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