2018年5月17日 丸の内で新しい街づくり実証実験 東大研究室がソフトバンクなどとデータ活用

東京大学大学院工学系研究科の大澤研究室は、三菱地所(株)、富士通(株)、ソフトバンク(株)と、東京・丸の内エリアで、産学連携で業種を超えてデータを活用することで新しい街づくりを目指す実証実験を5月14日から実施している。

この実証実験では、三菱地所が保有するビルの設備稼働データや商業施設関連データなどとソフトバンクグループが保有する人の流れに関するデータなどを、ブロックチェーン技術を活用した富士通独自のデータ流通・利活用基盤を用いて流通させて共有。その後、ソフトバンクのプラットフォームなどを活用してこれらのデータを組み合わせて分析する。分析にはソフトバンクを中心に各企業や組織の知見を活用し、業種を超えた新事業・サービス創出を目指す。

ブロックチェーン技術は、ネットワークに接続された複数のコンピューターが取引記録などを分散台帳として共有し、相互に認証するもの。高い可用性や改ざん不能といった特長を活かして、仮想通貨の流通のほか、さまざまな分野で応用が始まっている。

データの活用方法については、東大の大澤研究室との産学連携によりデータから効率的に価値を生み出す手法『データジャケット』と『IMDJ』も取り入れる。

データジャケットは、大澤幸生教授によって考案されたデータ記述モデルで、データの詳しい内容は明かさずに、データの概要や取得期間、取得場所などの情報を記述することで、デジタル情報の羅列である実際のデータの価値を人が理解できる形式で記述する手法。データジャケットのシステムに関する大澤教授らの研究は、科学技術振興機構などの助成を受けて進められてきた。

また、データの活用方法を検討するワークショップであるIMDJ(Innovators Marketplace on Data Jackets)は、データジャケットで登録されたデータ情報をもとに、新たなデータの組み合わせやその分析手法、分析結果を用いた新しいビジネスモデルを提案し評価し合う、グループによるアイデア創出法。

例えば、オフィスビルの電力使用量データと、ビル周辺の人流データを組み合わせて、効果的な販促施策を立案するなど、一見関係無く見えるデータ同士の組み合わせから新たな価値を生み出せるようなデータの利活用を目指す。

電力使用量や店舗の売上などのデータを共有

実証実験では5月14日の開始以降、データを提供、分析または活用する参加企業・組織を段階的に募る予定。三菱地所、富士通、ソフトバンク、大澤東大研究室は、今後、丸の内エリアの就業者や来街者へ向けて新たなサービスを提供することだけでなく、業種を超えたデータ活用による新しい街づくりのあり方を研究する。

具体的には、丸の内エリア内で、三菱地所が有するオフィスビルや商業ビル内で蓄積された過去の電力使用量や商業ビル内の店舗での売上、顧客の属性情報や、ソフトバンクグループが保有する人の流れに関するデータをはじめ、丸の内エリアに関わるオープンデータなど数十種類のデータを、データの概要情報を記述する「データジャケット」の形式でデータ流通・利活用基盤上に登録し、各参加組織へと共有する。

各参加企業は、大澤研究室主導でデータの活用方法を検討するワークショップを実施するとともに、データ流通・利活用基盤を活用した〝データジャケットのつながりの可視化〟により、丸の内エリアの就業者や来街者などを対象にした新規サービス創出を検討する。さらに、データ分析者が実際のデータをもとに行動法則などを導き出し、データの活用アイデアを深掘り検討する。

創出した活用アイデアは、三菱地所の有する丸の内エリアのオフィスビルや商業ビルなどでサービスの実証実験を実施し、実用性を検証する。

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今回の実証実験に参画する大澤教授は、1997年に大阪大(当時助手)でキーグラフ®を開発したのを起点とし、2000年には筑波大(当時助教授)でチャンス発見学を国際的に創始した。

その後、2008 年に東京大大学院でデータからのチャンス発見手法を拡張したInnovators Marketplace®なる、組み合わせ発想支援手法を開発した。

2013年に大澤教授は、当時流行したオープンデータ解析コンテストを改善する視点から「データジャケット」を考案し、この技術を用いてInnovators Marketplaceをデータ駆動イノベーション手法へと発展。その後、研究室としてIMDJを、データを用いた企業の新ビジネス創成をはじめ、2014年度以降は経済産業省や国土交通省等が主催する官民のデータ駆動型イノベーション創出事業(DDI)に提供してきた。

この間、大澤研究室では、経験の浅いユーザもデータジャケットやデータ変数候補の検索ができるようなシステムも構築している。


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