2017年10月17日 ヤムイモのゲノム配列解読に初成功 国際的な研究連携で西アフリカの農業問題に取り組む

(公財)岩手生物工学研究センター(IBRC)と(国研)国際農林水産業研究センター(JIRCAS)は、ナイジェリアにある国際熱帯農業研究所(IITA)との国際共同研究を通じ、アフリカの重要な作物で、日本で栽培されているナガイモ、ジネンジョ等の仲間であるヤマノイモ属作物(ヤムイモ)「ギニアヤム」の全ゲノム配列の解読に世界に先駆けて成功した。さらに、解読した情報を基に性別を決定する遺伝子の座乗するゲノム領域を同定し、幼植物期に性別を推定することができるDNAマーカーを開発した。このマーカーは、品種・系統によって雄、雌の性別が異なり開花するまでその性別が判断できないというヤムイモの品種改良の障壁を乗り越え、品種改良を加速化・効率化することに大きく貢献すると考えられる。これらの成果は、ギニアヤムをはじめとするヤムイモの生産性や栄養価の改良を飛躍的に加速し、特に西アフリカにおける食料生産、栄養改善に貢献することが期待される。

西アフリカの食生活に欠かすことのできない作物 ヤムイモは、ヤマノイモ属に含まれるイモ類植物の総称で、日本で栽培されている種としては、ナガイモ、ヤマノイモ(ジネンジョ)、ダイジョが知られている。アフリカでは主食として広く栽培されており、特に西アフリカの生産量は年間約5400万トンで、世界のヤムイモ生産量の約95%を占めている。伝統的な調理法や加工技術など食文化に裏打ちされた利用法があり、それぞれに好まれた色や味などに基づく品種の使い分けがある。

ヤムイモの中でもギニアヤム(ホワイトギニアヤム)とダイジョは、西アフリカの食生活に欠かすことのできない重要な主食作物だが、生産地と消費地が西アフリカに集中しているため、生産性や品質向上に向けた品種改良(育種)に関する現地、あるいは海外機関による研究、技術開発はほとんど進んでいなかった。

3つの研究機関で国際共同研究 国際農林水産業研究センターは、アフリカで今後予想される人口増加に伴う食料問題解決のため、さらに小規模農家の収入増加のため、ヤムイモの生産性や品質の改良の推進に着目している。2011年度からは、ヤムイモの生産性や品質の改良の基盤となるゲノム情報の整備や育種技術を開発し、得られた知見や技術を現地での育種活動に利用してもらうことを目的に、ナイジェリアにある国際熱帯農業研究所、岩手生物工学研究センター等、国内外の機関と国際共同研究を実施してきた。

今回の研究では、ヤムイモのDNA情報に基づいた育種を可能にするため、岩手生物工学研究センターと国際農林水産業研究センターは、国際熱帯農業研究所との国際共同研究を通じて、西アフリカの主要なヤムイモであるギニアヤムのゲノム配列を解読した。また、解読したゲノム情報の解析を通じて、性別を決定する遺伝子座を同定し、幼植物期に性別を推定することができるDNAマーカーの開発に成功した。

ヤムイモは品種・系統によって雄株、雌株、両性株が異なるため、開花しないと性別が判断できず、戻し交配などによる品種改良の障壁となっていた。このDNAマーカーは、その障壁を乗り越え、育種の効率化に大きく貢献すると期待される。


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