2022年3月8日 ブドウ収穫後の着色改善方法のSOP公開 光と温度を用いて効果的にブドウの着色を改善

農研機構は、収穫後のブドウの着色を光と温度を用いて効果的に改善する方法を記載した「標準作業手順書(SOP)」を作成し、ウェブサイトで公開した。

 

生産者の所得にも影響する着色不良

ブドウの果皮色は、商品価値に直結する重要な果実形質である。しかし、現在普及している着色系品種の多くは、温暖化の影響により着色不良が多発している。ブドウでは糖度が高く食味良好でも、着色不良などの外観の問題で等級が下がり生産者の所得に影響が出るため、大きな問題となっている。

ブドウの着色不良が多発する地域では、その対策として、果実の生育期間中の環状はく皮や摘葉処理などが行われることがある。しかし、これらの技術は作業が煩雑であることや処理時期の見極めが難しいことから、高付加価値販売を目指す生産者や収穫後の果実を取り扱う流通業者などでも簡便に利用できる技術の開発が求められていた。

 

果実発色促進装置を共同開発

農研機構が代表を務めた先導プロジェクト((果樹供給拡大)2016~2020年度)では、収穫後のブドウ果実に対して〝光照射〟と〝15~20℃の温度処理〟を5~9日間行うことで、効果的にブドウの果皮色が改善することを明らかにした。さらに、得られた知見を基に収穫後のブドウの着色を実用レベルで改善する果実発色促進装置を山口県産業技術センターなどと共同開発した。

新たに開発した装置は、このプロジェクト以前に開発された装置を基本技術として、青色チップLEDを多数配置した面光源、面光源と果実までの距離を調整可能なフレーム、温度制御のための容器で構成されている。これらの構成品を調整することで、形状や大きさが異なるブドウの着色を進めることができる。

この装置については、これまではリーフレットなどで紹介と普及が進められてきた。今回、さらなる普及を図るため、内容をより実践的な標準作業手順書(SOP)として充実させた。

 

SOPの目的・構成

このSOPは、収穫後のブドウの着色改善技術を実際に導入するための手順書であり、①収穫後の果実の着色改善を実現できる装置の開発・販売を検討するメーカー向けの技術情報の提供、②果実発色促進装置の購入・利用を検討している果樹生産者、市場・流通業者、普及指導機関への使用方法の解説を目的に作成されている。

1~2章では、ブドウの着色不良の要因が解説されているとともに、収穫後のブドウの着色改善に適した光と温度処理条件が説明されている。

3章では、光と温度処理による収穫後の着色改善効果が高い品種が紹介されているとともに、処理による果皮色以外の果実品質への影響、果実糖度が着色改善効果に及ぼす影響を説明している。さらに、参考として、冷蔵貯蔵後の着色改善事例も紹介されている。

4章では、実用化技術開発の一例として、青色LEDが搭載された果実発色促進装置の概要とその使用方法が説明されている。装置によるブドウの着色改善効果(アントシアニン色素の蓄積)が示されるとともに、粒売りブドウを例とした装置の使用手順について詳しく解説されている。

5章では、参考データとして、光と温度処理による着色改善機構について遺伝子レベルでの解説、果実糖度が収穫後の着色改善に及ぼす遺伝子発現の影響が紹介されている。

巻末には、このSOPにおける関連用語の解説、参考資料などが掲載されている。

 

所得増加だけでなく食品ロス削減も期待 

本SOPにより、果実発色促進装置を活用したブドウの着色改善技術が普及することで、果実の品質向上による生産者の所得増加が見込める。さらに、この技術は着色良好果の生産の安定化につながり、生産・流通段階でのブドウの廃棄量を減らすことができることから、SDGsの目標の一つである食品ロスの軽減への貢献が期待される。

研究グループは今後、ブドウ以外の果樹や果菜類にこの技術を応用するため、処理中の光質や光量などの検討を進め、より幅広い品目で効率的に品質が保持・向上できる技術の開発を進めていくとしている。


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