2018年9月21日 ピロリジジンアルカロイド類の含有実態調査 昔から行われてきたあく抜きが含有量を減少させる

農林水産省は、ピロリジジンアルカロイド類の含有実態調査結果の第2報を公表した。ピロリジジンアルカロイド類は、キク科、ムラサキ科など一部の植物に含まれる天然毒素で、国際的に食品安全の分野における関心が高まっている。今回はピロリジジンアルカロイド類を含むとの報告があったキク科のフキについて調査が行われたが、その結果、ふきやふきのとうのほとんどにピロリジジンアルカロイド類が含まれていたが、えぐみや苦味をとるために伝統的に行われてきたあく抜きをすれば大きく減らせることが分かった。昔から行われてきたあく抜きは、ふきやふきのとうを美味しく食べるだけでなく、健康な食生活を続ける上でも重要である。

 

日本で昔から食べられてきた「ふき」や「ふきのとう」を調査

近年、食品安全の分野では、食品に含まれる天然毒素への関心が国際的に高まっている。ピロリジジンアルカロイド類もその一つで、キク科、ムラサキ科等の一部の植物に含まれていることが報告されている。また、日本国内にある野生や栽培の植物の一部に、ピロリジジンアルカロイド類を含むものがあることが報告されており、日本原産の植物であるキク科のフキもその一つである。

このフキの葉柄である「ふき」や、フキの花穂である「ふきのとう」は、和食には欠かせない春の食材であり、日本では昔から食べられてきたが、ピロリジジンアルカロイド類の詳細な含有実態は不明だった。このため、今回、国内で流通する食品の安全性を確認するため、フキ中のピロリジジンアルカロイド類の含有実態が調査された。

 

調査結果の概要

今回の調査では、国産のふき91点、ふきのとう62点について、フキに主に含まれることが論文などで報告されている3種類のピロリジジンアルカロイドの濃度が測定された。

その結果、ふきやふきのとうのほとんどからピロリジジンアルカロイド類が検出された(検出限界:0.1~1mg/kg)。また、ふきのとうに含まれるピロリジジンアルカロイド類の濃度は、ふきよりも高いことがわかった。

フキは、えぐみや苦味が強いため、わが国では伝統的にあく抜きをしてから食べられている。ピロリジジンアルカロイド類は、水に溶けるものが多く、そのため、今回の調査では、伝統的にあく抜きとして行われている茹でこぼしや水さらしによって減らせることについても検討が行われた。

その結果、あく抜きで、ふきではピロリジジンアルカロイド類が1割~3割に、ふきのとうでは2割~4割に減ることが分かり、伝統的な食文化で継承されてきたあく抜きが、安全性を高める観点からも有効であることが証明された。

ふきやふきのとうは、その独特の風味や食感が春の味覚として日本の食文化に根付いており、わが国では長い食経験を有している。これまで、ふきやふきのとうを食べたことによる、ピロリジジンアルカロイド類が原因と疑われる健康被害は日本では報告されていない。ふきやふきのとうは、しっかりとあく抜きをすれば、大量に食べたり、食べ続けたりしない限り、安全に美味しく食べることができると考えられる。

しかし、ふきのとうには、ふきよりもピロリジジンアルカロイド類を高濃度に含むものがあるだけでなく、あく抜きをしないで食べることもあるため、食べ過ぎには注意が必要だ。

 

栽培管理や加工・調理で低減する方法の開発を推進

日本では、ふきやふきのとうの独特の風味や食感が春の味覚として昔から親しまれているが、その強いえぐみや苦味から、わが国では伝統的にあく抜きして食べられてきた。しかし、近年、調理時間の短縮や成分保持のため、ふきやふきのとうに限らず、野菜や山菜をあく抜きしないで食べることを推奨する情報もある。ふきやふきのとうはピロリジジンアルカロイド類を含むため、伝統を引き継いでしっかりとあく抜きして食べることは、これらを美味しく食べるためだけでなく、国民が健康な食生活を続ける上でも重要である。

また、ふきやふきのとうは、数少ない日本原産の野菜で、和食を代表する食材の一つである。農林水産省では、日本の食文化に欠かせないこれらの安全性をより高めるため、栽培管理や加工・調理でピロリジジンアルカロイド類を低減する方法の開発にも取り組んでいくとしている。


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