2016年4月21日 ドローンで図書の配送実験に成功 情報通信機構、制御通信の安全性確立が急務

わが国をはじめ世界各国で小型無人飛行機ドローンの業務活用が模索されているが、国立研究開発法人情報通信研究機構は、(株)プロドローンと共同で、ドローンを使って学校図書室の本を別の学校へ配送する図書配送システムの実証実験に成功した。

実証実験は、「地方創生・近未来」の戦略特区、秋田県仙北市で行われた。ドローンに約1キログラムの図書を積載し、高度約50メートル、距離約1.2キロメートルの自動航行に成功した。また、ドローン、地上局、図書室端末、配送管理端末、データサーバで構成するシステムの通信に共通鍵暗号とワンタイムパッド暗号を適用することで、制御の乗っ取りや情報漏えいを完全に防御した環境で配送サービスが実施できることを示した。

 

秋田県仙北市で実証実験 西明寺小→西明寺中

ドローンの技術が急速に進歩し、空撮や測量、インフラ点検などに加えて、さまざまな物資を運ぶ配送サービスも始まろうとしている。ところが、ドローンと地上局との遠隔制御に使われる無線通信は、傍受や干渉、妨害の影響を受けやすく、安全性が課題。

現状では、標準的な暗号化すら行われないケースが多く、制御通信における情報セキュリティ対策は十分ではない。乗っ取りや情報漏えいを完全に防御したドローンと地上局間の制御通信の安全性を確立することが急務となっている。

今回の実験では、将来の応用も念頭に置き、1)ドローンと地上局間の制御通信の完全秘匿化、2)どんななりすましも見破るユーザ認証、絶対改ざんできないメッセージ認証、3)地上のサービス端末やデータセンター間を結ぶ通知の暗号化―の情報セキュリティ機能を図書配送システムに組み込んで一連の動作実証を行っている。

 

ドローンと地上局間の制御通信の完全秘匿化

今回の実証実験では、仙北市の西明寺小学校からドローンが離陸し上昇する際と西明寺中学校上空から校庭に降下する際のドローンと地上局間の制御通信を、ワンタイムパッド暗号を用いて完全秘匿化した。

ワンタイムパッド暗号化方式は、どんなに高い計算能力を持つ盗聴者であっても、暗号文から平文を永遠に解読できないことが証明されている最も安全で強固な暗号方式。この技術をドローンへ搭載することによって、将来、重要施設の監視などにおいて制御通信の乗っ取りや情報漏えいを完全に防御することが可能になる。

 

どんななりすましも見破るユーザ認証、メッセージ認証

ドローンによるサービスが今後普及し、多くの組織やユーザが関わるようになると、悪意を持った者が偽の暗号鍵をドローンやコントローラに入り込み、なりすまして不正を行う可能性も増えると懸念される。

今回の実験では、どんな不正者に対しても検知できるユーザ認証技術、及びデータ改ざんを完全に防ぐメッセージ認証技術が、ドローン、地上の制御局(コントローラ)、物理乱数生成器に組み込まれている。

具体的には、認証の度に異なる真性乱数を用いてユーザ認証やメッセージ認証を行うヴェグマン・カーター認証方式をプログラム実装している。これによって、例えば、不正者が偽の暗号鍵をメモリスティック等でドローンに入れ込もうとすると、即座に検知して、不正アクセスを未然に防ぐ。

図書室端末とデータセンターと配送管理端末との間の通信においては、インターネットのデータ通信における標準的な暗号方式に、さらに真性乱数を組み合わせて、セキュリティレベルを格段に向上させた通信を実現した。将来、薬の配送など、重要個人情報を扱う分野におけるドローンの利用を想定した技術認証になっている。


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