2018年4月18日 ドライアイ、新基準で患者3割増 順大教授らが調査、より多くの患者の加療に期待

順天堂大医学部附属順天堂医院眼科の村上 晶教授、猪俣武範助教らの研究グループは、2016年のドライアイ診断基準の改定を受けて、旧ドライアイ診断基準と新ドライアイ診断基準でのドライアイ患者の分布について調査を行った。その結果、旧診断基準で「ドライアイ疑い」と診断されていた患者の80%が、新診断基準では「ドライアイ確定」と診断され、ドライアイ確定患者数は33%も増加することが明らかになった。

さらに、新診断基準でのドライアイ確定例の中で、涙液層破壊時間短縮タイプのドライアイは、38%を占めることがわかった。この研究結果により、これまでドライアイと診断されなかった患者が、新診断基準によりドライアイ確定と診断されることで、より多くの患者に加療できる。この研究は、世界的に知られる英国の学術誌ネイチャーの姉妹誌であるサイエンティフィック・リポーツ誌(1月30日)に発表された。

 

 国内2000万人、世界では10億人以上

ドライアイは日本に2000万人、世界に10億人以上いると推測される最も多い眼疾患。疾患の原因として、加齢、ストレス、デジタル機器の使用時間の増加などが考えられ、ドライアイは現代病として今後も増加すると見込まれている。

ドライアイに罹患すると、眼精疲労、眼痛、表在性角膜上皮障害、頭痛、自覚視力の低下などクオリティ・オブ・ライフ(QOL)や業務の生産性を下げることが明らかになっている。しかしながら、未だにドライアイ確定の診断に至っておらず、QOLや生産性を低下させてしまっている人が多くいることが現状。

一方、これまでの研究から、旧診断基準ではドライアイ確定と診断されていなかった涙液層破壊時間短縮タイプのドライアイは、発症に涙液層の安定性の低下が密接に関連し、ドライアイの多くを占めることが明らかになってきた。このため、ドライアイの定義及び診断基準を見直す必要が生じ、2016年の改定に至った。制度改定を受けて、村上教授らは新診断基準でのドライアイ患者の分布の変化及び涙液層破壊時間短縮タイプのドライアイの分布を調査した。

 

 2016年に診断基準改定

新ドライアイ診断基準におけるドライアイ患者の分布を明らかにする目的で、2015年11月から2017年4月に順天堂医院眼科外来を受診した患者(250例)を対象に、ドライアイ旧診断基準と新診断基準におけるドライアイ患者の分布の変化の調査を行った。旧診断基準では、ドライアイ確定38.8%、ドライアイ疑い35.6%、非ドライアイ25.6%であったのに対し、新診断基準では、ドライアイ確定66.8%、非ドライアイ31.2%となった。

旧診断基準での〝ドライアイ疑い〟の79.8%は新診断基準で〝ドライアイ確定〟に割り振られた。新診断基準でドライアイ確定患者は33%増加し、そのうち38.3%に「涙液層破壊時間短縮タイプのドライアイ」を認めた。

このような研究結果から、旧ドライアイ診断基準での〝ドライアイ疑い〟患者の79.8%が新ドライアイ診断基準では〝ドライアイ確定〟診断となり、ドライアイ確定患者は33%増加。このうち38.3%に「涙液層破壊時間短縮タイプのドライアイ」が含まれることが判明した。

 

  アジアでの臨床研修が可能に

ドライアイの加療では、涙液層の安定性を低下させている眼表面の不足成分を看破して、点眼によって成分を補充する必要がある。今回の研究結果から、「涙液層破壊時間短縮タイプのドライアイ」が新診断基準では「ドライアイ確定」として多くを占めることが明らかになったことで、「涙液層破壊時間短縮タイプのドライアイ」での涙液の安定性の改善に着目した加療ができるとみられている。

ドライアイは多因子疾患で、さまざまな検査が行われることから、これまで世界で診断方法は統一されてなかった。一方で、2016年のドライアイの診断基準の改定は、国内にとどまらず、アジア諸国に合意を得たことから、アジア諸国でもこの診断基準の導入が予想され、普遍的な臨床研究をアジアで行うことが可能となり、より一層ドライアイ加療の進歩が予想される。


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