2019年5月20日 トマトなどの害虫を天然物質で予防 薬剤抵抗性害虫が出ない防除技術の開発に期待

農研機構の生物機能利用研究部門は、作物の重要害虫であるミカンキイロアザミウマやナミハダニの防除にタバコ由来の天然物質である「ロリオライド」が有効であることを発見した。

これらの害虫の防除には主に殺虫剤が利用されているが、単一の殺虫剤を使用し続けることで殺虫剤が効かない「薬剤抵抗性害虫」が出現することが問題となっている。このため、新たな防除技術の開発が望まれていた。

今回有効性が確認されたロリオライドは、植物の害虫抵抗性を高めることによって被害を抑える。害虫を直接殺す効果はないため、防除剤として使った場合、薬剤抵抗性が生じにくいと期待されている。

現在、植物が本来有する害虫抵抗性を高めて被害を抑える薬剤「プラントアクティベーター」は国内では実用化されていないが、農研機構では、今後、ロリオライドを用いた薬剤抵抗性が出にくい害虫防除剤の開発に向け、農薬メーカー等の民間企業との連携を目指すとしている。

 

求められていた新しい防除技術の開発

国連食糧農業機関(FAO)の調査では、世界の作物の10~30%が農業害虫による収量低下や品質低下等の被害を被っていることが報告されている。

こうした農業害虫に対し、慣行農法では、即効性があり、効果も安定している殺虫剤による害虫防除が主体となっている。しかし、単一の殺虫剤を連続で使用すると、その殺虫剤が効かない害虫が出現してしまう。こうした薬剤抵抗性害虫の問題を回避するため、新しい防除技術の開発が望まれていた。

 

天然資源が持つ害虫防除効果を調査

農研機構では、今回の研究において、害虫を直接殺さずに防除する新たな薬剤を探索するため、植物や微生物等の天然資源が持つ害虫防除効果について調査を行った。その結果、タバコに強い害虫防除効果があることを発見し、その有効成分がカロテノイドの1種であるロリオライドであることを突き止めた。

トマトの葉にロリオライドを与え、作物の重要害虫であるナミハダニの雌を放飼させると、対照区と比較して生存率と産卵数の低下が確認された。また、他の重要害虫であるミカンキイロアザミウマとハスモンヨトウに対しても、ロリオライドは同様の効果を示すことが確認された。ロリオライドはこれら害虫に対する直接的な殺虫活性は持たないので、植物の生体防御反応を高めるプラントアクティベーターとして働くことが分かった。

 

害虫防除剤の開発につなげる

プラントアクティベーターは、直接的な殺虫活性や殺菌活性は示さずに、植物が本来有する病害虫抵抗性を高めることで害虫や病害を防ぐ薬剤。防除効果の持続期間が長く、広範な害虫に対して有効といった特徴を持つ。国内では、農薬としてイネいもち病等の病害に有効なプラントアクティベーターが販売・利用されているが、害虫用のプラントアクティベーターとして登録された資材はまだない。

今回の研究で害虫防除に有効なプラントアクティベーターの有望素材が見つかったことから、農研機構では、今後の研究において、農薬メーカー等の民間企業と連携して害虫防除剤の開発につなげていくとしている。


株式会社官庁通信社
〒101-0041 東京都千代田区神田須田町2-13-14
--総務部--TEL 03-3251-5751 FAX 03-3251-5753
--編集部--TEL 03-3251-5755 FAX 03-3251-5754

Copyright 株式会社官庁通信社 All Rights Reserved.