2019年4月4日 ソメイヨシノのゲノムを解読 遺伝子分析により開花時期の予想が可能に

かずさDNA研究所、島根大学、京都府立大学は共同で、サクラを代表する人気品種であるソメイヨシノのゲノムを解読した。ソメイヨシノは、その成り立ちや開花時に働く遺伝子について多くの不明な部分があったが、今回、島根大学が保有する139品種を解析し、類縁関係を調査した結果、通説通り、ソメイヨシノはエドヒガンとオオシマザクラを祖先に持つ可能性が見出された。ソメイヨシノのゲノムや開花に関わる遺伝子が明らかになったことで、遺伝子解析により一層正確に開花時期が予測できると期待されている。

 

世界中に植えられているソメイヨシノのゲノムの配列を解析

サクラはバラ科サクラ属の鑑賞用落葉樹種の総称で、エドヒガンやオオシマザクラ、ヤマザクラなどの基本野生種をもとに多くの品種が作出されている。このうち、ソメイヨシノはエドヒガンとオオシマザクラの種間雑種とされている。ソメイヨシノは挿し木などによりクローン増殖され、日本だけでなく世界中に植えられている。

ソメイヨシノの開花日を正確に予測することは、多くの花見ツアーが企画されている昨今、観光産業にとって非常に重要である。しかし、現在までにソメイヨシノの開花に関する分子生物学的な解析はほとんど行われていない。その一因として、種間雑種であるソメイヨシノはエドヒガン由来とオオシマザクラ由来の2つのゲノムを持つためにゲノム構成が複雑であり、ゲノムや遺伝子の解析が容易ではないことが理由として考えられている。そこで、今回、研究グループはソメイヨシノのゲノムを構成する2つのゲノムの配列の解析を行った。ゲノム解読に使用されたソメイヨシノの葉組織は、原木と推定されている上野恩賜公園に植栽されている樹木から許可を得て採種された。

 

139品種を解析し類縁関係を調査 開花に関わる遺伝子の探索を実施

今回の研究では、かずさDNA研究所が上野恩賜公園に植栽されたソメイヨシノのゲノム解読と島根大学が保有する139品種のSNP解析を実施し、遺伝子予測や連鎖地図の作成を行った。さらに、島根大学と京都府立大学が共同で開花に関わる遺伝子の探索を実施した。

島根大学が保有する139品種については、ddRAD‐Seq法で解析され類縁関係の調査が行われたが、通説通り、ソメイヨシノはエドヒガンとオオシマザクラを祖先に持つ可能性が見出された。

また、かずさDNA研究所がある千葉県木更津市鎌足地区に古くから伝わる鎌足桜は、ヤマザクラとオオシマザクラの血を引く可能性があることが判明した。

次に、PacBioロングリード技術を利用して解析を実施した結果、ソメイヨシノを構成するエドヒガンとオオシマザクラに対応するそれぞれ約3億5000万塩基対の2つのゲノムを精度よく決定することができた。さらに、ゲノム配列の中から9万5076個の遺伝子が見出された。

また、ソメイヨシノとヤマザクラを交雑して得た種子をddRAD‐Seq法で解析し、1万6933個のDNAマーカーの位置を示したソメイヨシノの遺伝地図が作成された。

ソメイヨシノのゲノム構造は、近縁種であるオウトウ(サクランボ)、モモ、ウメと良く似ていた。

ソメイヨシノの2つの祖先種は552万年前に異種に分かれたと推定され、この2種が百数十年前に交雑によって再び一つになることでソメイヨシノが誕生したと考えられる。

さらに、研究では開花前1年間(1ヵ月ごと)、開花前1ヵ月間(2日ごと)の蕾の転写産物の解析を実施し、ソメイヨシノが開花に至るまでの遺伝子発現の変化を明らかにした。

 

より正確な開花時期の予測に期待 研究成果の新品種開発へつなげる

ソメイヨシノのゲノム配列を利用することで、ソメイヨシノの祖先を正確に特定できるようになる。また、ソメイヨシノの開花に至るまでの遺伝子発現の変化が明らかになったことで、蕾の遺伝子分析により、より正確に開花日を予測することができるようになる可能性がある。

今回の研究成果については、サクラの様々な形質に関して遺伝解析が進むとともに、新品種の開発に役立てられることが期待されている。


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