2020年10月20日 コロナ禍で増える「地方生活希望」 大都市集中是正は懐疑的意見が多数

地方での生活を希望する人が、新型コロナウイルス感染症拡大の影響などで増えていることが、日本財団17歳から19歳までの若者を対象に行った意識調査で明らかになった。一方で、大都市への人口集中に関しては、是正されないとの回答が多数を占めた。「結局都心が便利」などが主な理由。

調査に回答したのは、都市部出身者が36.2%、地方出身者63.8%。将来暮らしたい場所については聞いたところ、都市部を希望した者が56.5%、地方は43.5%だった。日本財団では昨年も同様の調査を行っており、その際は「都市部61.3%、地方38.8%」だったことから、地方での生活を希望する者が約5ポイント増えたことになる。

また、育った場所と将来暮らしたい場所の組み合わせをみると、「地方育ち×地方生活希望者」が全体の37.0%を占め、昨年度の33.1%より約4ポイント増加した。都市部希望者は都市部育ちが29.7%、地方育ちが26.8%で、いずれも昨年度に比べて微減という結果になった。

 

コロナ、「意識しない」過半数超

さらに、暮らしたい場所を考える上で、新型コロナウイルス感染症を考慮に入れたか確認したところ、「意識しない」が56.2%と過半数を確保し、意識した43.8%を上回った。

それではなぜ都市部、地方で暮らしたいのか?―。日本財団では、それぞれの回答者に理由を確認した。都市部で暮らしたい理由としては、「生活しやすい」が最多で63.4%。以下、「娯楽が多い」51.2%、「就労の選択肢が多い」37.5%、「多様なチャンスがある」30.6%、「大学など教育機関が多い」28.1%。昨年と比べると、トップ5は5位の教育機関以外は昨年と同様で、昨年調査では第5位に「人の交流が活発」が入った。

一方、地方生活希望の理由として最も多かったのは「自然環境が豊か」で51.5%。以下、50.1%が「生活しやすい」、38.9%が「治安が良い」、37.5%が「育った場所だから」、20.9%が「(新型コロナへの)感染リスクが低い」と回答した。約2割の「感染リスクが低い」は、今年選択肢に加わった。

 

大都市は便利で魅力的

大都市への人口集中が是正されると思うか聞いたところ、34.8%が「思わない(是正されない)」と回答。是正されると答えたのは26.5%となった。多数意見となった「是正されない」とした理由を聞いたところ、「学業や仕事の関係もあり、都市部から出て地方に行こうと思う人は少ない」「都市部に大企業や官公庁が存在する限り、就労目的での都市部への移動は減少しない」など、都市機能や教育機関、企業が集中している限り、都市部に移動せざるを得ないという回答が目立った。

また、「結局は都心が便利だから」「大都市は便利だし魅力的」など、やはり都市部は便利であるという理由も多くみられた。

一方で、是正されると思う理由としては、「人口が集中するとさらに感染が拡大すると思うから」「人口が多いため、密になることも多く感染のリスクも高いと思われる」など、大都市は人口が集中しているため、感染拡大の危険性や感染リスクが高いからと声が聞かれた。また、リモートワークが広まったことにより、都市部に出る必要がなくなるという回答も目立った。

さらに、大都市への人口集中の是正を進めるための必要な対策に関しても調査。「企業のリモートワーク推奨」が35.7%で最多意見となった。このほか、「若年層の雇用確保」(31.0%)、「地方企業の所得向上」(24.0%)、「移住支援」(23.0%)、「IT環境の整備」(20.0%)が上位を占めた。

このほか、若者の地方移住については、40.2%が「進む」と回答。22.0%の「進まない」を大きく上回った。


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