2021年2月17日 コロナ禍、女性と若者の自殺が増加 東大客員研究員らが調査、過去データと比較

新型コロナウイルス対策として行われるさまざまな政策が自殺者数増加につながる可能性が指摘されているが、東京大学客員研究員らの調査研究によると、昨年来のコロナ禍により、女性や若者の自殺者が増加していることが明らかとなった。

高所得国のデータでは、パンデミック初期の数ヶ月間は自殺率の増加は見られなかったが、2010年1月から2020年9月までの日本の自殺率のデータを用いた最近の分析では、2020年7月、8月、9月には女性で自殺率の増加がみられ、他方男性では増加がみられなかった。

この研究は、東大大学院医学系研究科の上田ピーター国際保健学専攻国際保健政策学分野客員研究員らが国立国際医療研究センター国際感染症センターの石金正裕氏とともに行った。研究では、厚生労働省が所管する2011年から2020年11月までの自殺で死亡した人の月別全国データ「自殺の統計:地域における自殺の基礎資料」を利用して実施。日本での自殺率の変化について、性、年齢層、職業別に分析を行った。分析はパンデミックと自殺率との関連について二つの異なる手法を用いて評価した。

まず一次分析として2016年から2020年までのデータを用いて差分の差分法分析を行った。その結果、2016年~2019年と2020年の自殺率は、男性の全年齢層を対象とした分析では4月~9月は統計的に有意な差はなかった。しかし10月、11月では2020年に有意に増加がみられた。女性の全年齢層を対象とした分析では、7~11月で、2020年に増加がみられた。

二次分析では2011年以降の自殺率の傾向を踏まえて予想される自殺率と、実際に観測された自殺率との比較を行った。その結果、男性では30歳未満の層でその比率(RR)が最大。すなわち2019年までのトレンドから推定された自殺率と2020年に実際観察された自殺率との間に大きな開きがみられた。

上田客員研究員らの調査によると、2011年1月から2020年11月にかけて日本国内で自殺した人は、男性6万1366人(68.1%)、女性2万8682人(31.9%)、合計9万0048人にのぼった。年齢に関する情報は、男性6万1135人(99.6%)、女性2万8635人(98.3%)で利用可能であった。

また、自殺で死亡した男性は、30歳未満が8536人(14.0%)、30~49歳が1万8979人(31.0%)、50~69歳が1万9574人(32.0%)、70歳以上が1万4046人(23.0%)。自殺で死亡した女性は、30歳未満が3755人(13.1%)、30~49歳が7395人(25.8%)、50~69歳が8585人(30.0%)、70歳以上が8900人(31.1%)となった。

一方、職業に関する情報は、男性5万8094人(94.7%)、女性2万7122人(94.6%)で利用可能という状況になっていた。

自殺した男性の職業の内訳は、自営業または家業を営む人が5103人(8.8%)、会社員が2万670人(35.6%)、学生が4533人(7.8%)、無職が2777人(47.8%)という結果。

自殺した女性の職業の内訳は、自営業または家業を営む人が697人(2.6%)、会社員が4806人(17.7%)、学生が2120人(7.8%)、主婦が4724人(17.4%)、無職が1万4775人(54.5%)。2011年1月から2020年11月の自殺率は、30歳以上の男性で高く、自殺者数は無職男性、無職女性、会社員男性で多かった。


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