2020年7月31日 コロナ対策ガイドライン策定へ 順天堂大教授らが「夜の街」を調査研究

順天堂大学大学院医学研究科公衆衛生学の谷川武教授、和田裕雄先任准教授、遠藤源樹准教授らのグループは、飲食店等における新型コロナウイルスの市中感染拡大の防止策に関する調査研究を開始する。新型感染症対策の4要素である〝マスク〟〝新しい喫煙行動〟〝手指消毒〟〝換気〟。現状では、いわゆる「夜の街」を中心に十分な対策ができていない飲食店等が多く、早急に適切なガイドラインを策定することが必要になっている。飲食店等関連企業や自治体との産学官連携による実証研究を行い、『飲食店等での新型コロナウイルス対策(仮称)』の提言と、『同防止対策ガイドライン(仮称)』の策定を目指す。

 

手指消毒、「入口」で留まる

7月に入り、新型コロナウイルス感染症の感染者数が緊急事態宣言解除後最多を更新するなど、第2波への懸念が強まっているなか、感染拡大のメカニズムを明らかにすることは喫緊の課題となっている。また、新型コロナウイルス感染症で想定される感染経路として、WHOが会話や呼気等を介する空気感染の可能性を認めたことから、感染対策について改めて見直す必要が出てきた。

そこで研究グループは、マスク着用が困難な飲食時での感染に着目し、飲食店での新型コロナウイルス対策についてヒアリングを実施。その結果、緊急事態宣言解除後の開店にあたり、標準化された適切なガイドラインがなく、何を指標にどのような感染対策を実施すれば良いのかわからないといった声が多数あることがわかった。

無症状感染者を介する市中感染を減らすためにも、現地調査による飲食・喫煙等行動の現状分析を行い、飲食店等の実情に即した『飲食店等における新型コロナウイルス対策(仮称)』について策定した上で、飲食店等関連企業、自治体と連携し、継続的な実証研究を進めることを計画した。

研究グループは、中央区銀座エリアで、クラブ、キャバクラ、クラブディスコ等のいわゆる「夜の街」関連の店、また、レストランやバー等の一般の飲食店について、現地調査を実施した。その結果、調査を行った銀座エリアの飲食店等で、①手指消毒は入口での消毒にとどまること、②飲食・喫煙行動時に客がマスクを外したままの状況で長時間過ごしているケースが多数みられた。

また、「夜の街」関連の店では、店の外から店内が見えないようにすることを定める風営法の関係で窓やドアを開放することが難しいことから、換気が非常に悪いだけでなく、適切な換気そのものが行いづらい状況にあることが明らかとなった。

 

喫煙は換気の良い場所で

研究グループは、無症状感染者がマスクを外した状況で飲食・喫煙行動をとった場合、「会話」「呼気」「タバコの煙(呼出煙)」を介し、新型コロナウイルスの空気感染が発生する可能性について仮説を立てた。その場合、分煙化されていない「夜の街」関連の店だけでなく、分煙化が進んでいるとされるレストランでも喫煙エリアで人同士の距離が近い状態での喫煙行動による空気感染リスクが非常に高くなることが想定された。

そこで研究グループは、新型コロナウイルス感染対策のための飲食・喫煙の新しい行動様式として、「食後の談笑時にはマスクをすること」「喫煙者は換気の良い場所で一人で喫煙すること」を提言している。飲食店等の業態により新型コロナウイルス感染リスクの度合いは異なるが、「談笑時のマスク着用」と「新しい喫煙行動」は非常に重要な対策要素となる。さらに、研究グループは店内で「頻度高く手指消毒すること」「適切な方法で換気を行うこと」も感染予防に効果的な取組としてあげている。

研究グループでは、①マスク、②新しい喫煙行動、③手指消毒、④換気―の提言4要素について、それぞれどのような対策が有効であるかを今後検証する方針。さらに、現地調査で得られた課題を整理し作成した「飲食店等における新型コロナウイルス感染防止対策ガイドライン(仮称)」についても、飲食店等と協力し有効性を検証することとしている。


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