2019年6月18日 「非適正大学」の通告も 留学生在籍管理の徹底で新対応方針

2018年度所在不明者が留学生の16%に当たる823人にのぼった東京福祉大学の留学生管理について実地調査などを行っていた文部科学省と出入国在留管理庁は、同大学に適正化に向けた改善指導を行った。その上で、調査などで明らかとなった問題点を踏まえ、大学・専門学校における留学生に関して、「改善が見られない場合、在籍管理非適正大学として法務省に通告する」などという新たに在籍管理の徹底のための対応方針を策定した。

 

東京福祉大の実態調査を踏まえ

東京福祉大に対する実地調査では、学部研究生など安易な留学生受入れによる所在不明者が2016年度305人(10.1%)から2018年度には823人(16.0%)に増大し3年間で1610人に上り、授業開講当初から学部研究生の94人が欠席、うち66人が所在不明となっているなど不十分な留学生の在籍管理が見られた。

また、学部研究生の入学者選考で求められる日本語能力水準(N2相当)の設定不備と選考過程での不十分な確認により、N3相当以下の学生が多数在籍していることや、経費支弁能力の不十分な確認による多数の学費未納者の発生が見られ、結果として多数の退学者、除籍者、所在不明者の発生要因となっていることが明らかになった。

こうした問題点を招いた要因・背景には、職員一人当たり出願書類件数が2015年度83.2件から2018年度には194.7件に、職員一人当たり学生数が2015年度43.8人から2018年度に100.6人となるなど、留学生の受入れ規模に見合わない脆弱な組織体制があり、留学生の増大に対して適切さに欠ける修学環境の整備、留学生受入れの拡大に係る大学における不透明な意思決定プロセスがあったという。

わが国の外国人留学生は就学を目的に来日して高度な知識・技能を身に付け、多様な活躍の機会を得ることが期待される。しかし、就労を目的とする留学生を安易に受入れることは、留学生本人の不利益につながるとともに、受入機関の教育活動・在籍管理・学校運営への支障が生じる可能性がある。また、適正な留学目的で来日する留学生も含めた留学生制度全体の信頼・信用の失墜につながる。このため、留学生の在籍管理の徹底について、政府・大学等が一体となって対策を講じることが必要だ。

文科省と入管庁では、所在不明者や所在不明を理由とした除籍者が多く発生し、不法滞在、不法就労などにつながって実態が懸念されると現状の課題を分析。

 

在留資格審査を強化

文科省は、正規・非正規・別科の留学生受入れに共通した新たな対応方針として、①留学生の在籍管理状況の迅速・的確な把握と指導の強化、②在籍管理の適正を欠く大学等に対して、改善指導の結果、改善が見られない場合、「在籍管理非適正大学」として法務省に通告するといった在留資格審査の強化を打ち出した。

入管庁は、「在留管理非適正大学」及び3年連続「慎重審査対象校」とされた大学等については、改善が認められるまでの間、留学生への在留資格「留学」の付与を停止し、大学党名を文科省と同時に公表することとした。「慎重審査対象校」の判断基準の見直し及び同校留学生の在留資格審査において、経費支弁能力に関する資料に加え、日本語能力について試験による証明を求めることを検討することとしている。

非正規・別科・専門学校への追加的対応方針としては、実質的に進学のための予備教育課程として運用し、日本語能力が十分でない留学生を受入れている実態が懸念されることから、日本語能力試験N2相当、履修科目の正規課程科目との同一性などを確認することや、大学学部進学のための予備教育を受ける場合には、上陸基準省令の研究生・聴講生による在留資格「留学」の対象外とするなどとしている。また、専ら日本語教育を行う留学生別科について、教育の質確保や留学生の適正受入れのための仕組みがないことから、日本語教育機関に関する法務省の告示基準に準じた上陸基準省令に基づく基準を策定するなどとしている。


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