2019年12月6日 「話す英語」を脳科学的に訓練 東大教授が起業と共同研究、効果を実証的に検証

東京大学大学院総合文化研究科と(株)グローバルビジョンテクノロジーは、実用的な「話す英語」を脳科学的にトレーニングするアプリ「Gabby」の新メソッドとして、「Neuro‐Language Training,NLT」の開発に向けた共同研究を開始する。また、新しい英語トレーニング法が脳に与える影響を明らかにすることで、効果を実証的に検証する。

東大大学院総合文化研究科の酒井邦嘉教授は、生物物理学・脳神経科学・言語学等の異分野の研究経験を持ち、米国マサチューセッツ大学でノーム・チョムスキーに師事し、人間の言語能力を脳科学で解明しようとする言語脳科学者。これまで酒井教授は、第二言語としての英語が脳でどのように処理されているかを、母語である日本語と対比しながら研究してきた。

特に文法判断について、左脳の前頭葉にある「文法中枢」が英語と日本語に共通して働くことを突き止めている。さらに脳活動の個人差を定量化した研究では、英語に習熟するほど文法中枢の活動自体に減弱がみられた。このような「省エネ化」は、参加者の母語である日本語と同様に、第二言語である英語でも起こっている。

このような研究成果によれば、言語に普遍的な「文法中枢」に直接的に働きかけるようなメソッドを実際に開発して用いることができれば、英語の習得が母語に近づくことで、より自然になると考えられる。この仮説を検証する上で、共同研究は科学的にも重要な意義があるといえる。

(株)グローバルビジョンテクノロジー(GVT)は、IT技術に加え、語学力も備えたバイリンガルエンジニアを擁し、日本国内企業や外資系企業のグローバルプロジェクトを支援するサービスを提供している。GVT社は米国カリフォルニア州のシリコンバレーで創業し、2003年に日本法人を設置し、英語トレーニングアプリ「Gabby」の開発をしている。また、2015 年にカナダに設置したGCI社で、同年から「Gabby」を用いたサービス運用を開始した。

日本人の英語の運用能力は世界の中で低く、長年の英語教育改革にもかかわらず、この10年でさらにランクが低下し続けているのが現状。特に英語の聞き取りや発話は、日本人にとって習得が困難なものと指摘されてきたが、英語における口頭のコミュニケーションの重要度は今後も増す一方で、抜本的な改善が求められている。

この共同研究は、酒井教授の脳科学の知見に基づき、GVT社の最新の情報テクノロジーを融合させることによって、新たな英語トレーニングメソッドを開発するもの。また、新しい方法と従来の方法とを脳機能イメージング法により比較検討することで、そ効果を科学的に検証する。

共同研究は、はじめに酒井邦嘉教授が長年研究してきた脳科学的アプローチに基づき、新しいメソッド[脳(Neuro)科学的言語(Language)トレーニング法]として、最も自然に言語を習得するための方法を開発する。今回の新たな試みのポイントは、言語学者ノーム・チョムスキーが提唱してきた「普遍文法」を基礎に据えて、単語の想起ではなく、文を生成するようなトレーニングを集中的に行うというもの。言語学的な分析によると、たくさんの単語を同時につなげて文を生成するのではなく、単語や句を一つひとつ付加していくという特徴がある。

さらに酒井教授は、文生成の過程が実際に脳の文法中枢によって担われているということを最近実証した。この普遍文法に基づく文生成のトレーニングは、初等・中等教育学校や語学学校をはじめ、おそらく海外でも実施例のないもので、同共同研究で初めてスマートフォン上で手軽に使えるソフトウェアとして開発されることとなった。


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