2017年1月18日 「手元にスマホ」注意力低下 北大研究Gが実証、携帯使わない人ほど傾向大

若者だけでなく、今や老若男女問わず日常的に手元にあるのが当たり前となっているスマートフォン。便利さと依存性、さらにはここ最近問題となっている「歩きスマホ」という〝光と影〟の部分の指摘がみられるが、北海道大学の研究グループは、実際にスマホを使用してなくても、そばにあるだけで、勉学や仕事など本来むけるべき方向への注意が阻害されることを科学的に立証した。携帯端末を近くに置いておくことが注意に及ぼす影響を実証的に検証したもの。特に、普段は携帯電話を使わない人ほど影響が強い傾向にあった。

 

不明だった不使用時の影響

この研究は、携帯電話が単に置いてあることが注意に及ぼす影響を実証的に調べたもの。携帯電話やスマートフォンを使いながら他のことをすると、見落としや判断に遅れが出ることはよく知られているが、使用せずにそばに置いているとき、注意の広がりに与える影響は不明だった。北大大学院文学研究科の河原純一郎特任准教授は、中京大の伊藤資浩氏(北海道大学大学院文学研究科特別研究生)と共同で、こうした携帯端末そのものが注意に及ぼす効果を測定した。

その結果、画面を消した他人の携帯電話であっても、ただそばに置いてあるだけで注意が損なわれることがわかった。特に、普段は携帯電話を使わない人ほどこの影響が強い傾向にあったという。

河原特任准教授は、こうした効果が起こったことについて、二つの原因をあげた。一つは携帯電話が置いてあるだけでも注意を自動的に引きつけること、もう一つはそのような注意の引きつけと、それを無視しようとする働きに個人差があること。これらの二つの要因が合わさって、携帯端末が置いてあるだけで注意の広がりに偏りが生じ、身の回りに注意を向ける行動が阻害されると指摘している。

 

探索時間、0.6秒の差

河原特任准教授らの研究では、実際に使用せずとも、単に携帯端末が置いてあることで、注意が損なわれるかどうかを検証した。また、この効果と利用頻度の関係を検討。実験参加者をスマホ条件と統制条件の二グループにランダムに割り振り、検証した。

スマホ条件では、パソコンモニタの脇に実験者のスマホを置き、実験参加者にモニタ上の多数の文字の中から標的文字を探すよう求め、探索にかかった時間を計測した。統制条件では、スマホの代わりに同サイズのメモ帳を置き、同様の実験を行った。その後、全参加者に対して普段のスマホ使用頻度や愛着について質問した。

調査の結果、標的を探すまでに要した時間は、統制条件よりスマホ条件で長くかかった。すなわち単にスマホが置いてあるだけで自動的に注意が向いてしまい、課題成績が悪くなった。

具体的には、手帳を置いたグループは検索終了までの時間が3.051秒だったのに対し、スマホを置いたグループは3.660秒かかった。

しかし、この効果は使用頻度が低い人に強く起こり、スマホを普段からよく使用する人はかえってスマホの置かれた側の標的に気づきやすいことも明らかとなり、スマホの存在を無視したり、注意する機能に個人差があることがわかった。

調査結果は、日本心理学の国際学術誌「ジャパニーズ・サイコロジカル・リサーチ」に12月26日公表された。


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