2017年11月13日 「しきさい」と「つばめ」 異なる軌道にHⅡAロケットで打上げ

三菱重工業株式会社と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、気候変動観測衛星「しきさい」と超低高度衛星技術試験機「つばめ」をHⅡAロケットで12月23日に種子島宇宙センターから打ち上げる。1本のロケットでそれぞれ異なる高度の軌道に投入しようというもので、JAXA開発の技術が初めて適用されたもので、衛星の相乗り打上げ機会が拡大し、HⅡAロケットの打上げ能力を最大限活用することが可能となる。

気候変動観測衛星「しきさい」は、すでに平成24年度に打ち上げられ、現在運用中の水循環変動観測衛星「しずく」とともに、地球環境変動観測ミッションを構成する2つの衛星システムのひとつ。地球規模での気候変動や水循環メカニズムの解明を目指し、漁業や気象などの分野における利用実証を目的としている。

「しきさい」には、多波長光学放射計が搭載される。これによって、地表面や海面などから放射される近紫外から熱赤外までの幅広い波長域で雲、エアロゾル、植生、地表・海面温度、積雪・海氷分布などを観測し、気候変動による地球環境変化の監視や温暖化予測の改善に貢献する。さらに、赤潮や黄砂といった生活環境の把握や漁業の効率化などにも役立つと期待されている。

一方、超低高度衛星技術試験機「つばめ」は、これまでの人工衛星よりも300キロほど低い軌道を利用する初めての地球観測衛星。超低高度での飛行を可能にすることで、地上により近くなるため、光学画像の高分解能化、観測センサ送信電力の低減、衛星の製造・打上げコストの低減などが期待されている。

「つばめ」が飛行する超低高度軌道では、多くの地球観測衛星が周回する高度600キロから800キロの軌道に比べ、1000倍もの大気の抵抗を受けるため、従来に比べ大量の燃料が必要となる。

この課題を解決するために、JAXAが培ってきたガスジェットに比べ燃料の使用効率が10倍良いイオンエンジンを採用し、また、大気の抵抗が小さくてすむ小型の衛星を開発し、超低高度でも長期間にわたって軌道を維持するための技術を実証する。

 

慣性飛行と燃焼を繰り返し 軌道高度を変え宇宙に投入

「しきさい」と「つばめ」はともにHⅡAロケットの2段目に搭載され、近地点高度約788キロ、遠地点高度約806キロの太陽同基準回帰軌道上で「しきさい」を分離した後、慣性飛行やエンジン燃焼を繰り返し、地点高度約450キロ、遠地点高度約643キロの楕円軌道上で「つばめ」を分離する。

これまでの人工衛星にとって未開拓の超低高度軌道で「つばめ」を安定して飛ばし、一定期間の長期観測を行うことができれば、宇宙技術の現場にさまざまなメリットが生まれ、これまで十分にわかっていなかった地球の超高層大気の気象や地殻構造などもわかるようになる。

このため「つばめ」は、超低軌道衛星の実現に向け、必要な技術情報を集めることできる次世代宇宙開発の出発点ともいえる人工衛星になるものと注目を集めている。


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