(株)産業革新機構(本社:東京都千代田区、INCJ)は、世界最軽量の地球観測用小型レーダー(SAR)衛星の開発に取り組む(株)QPS研究所(本社:福岡県福岡市、QPS)の第三者割当増資を引き受け、同社の事業の成長資金として8.5億円を上限とする出資を行うことを決定した。また、共同投資家8社も同社への出資を決定しており、QPSの資金調達は総額23.5億円となる。調達した資金は、衛星打ち上げを含めた研究開発の費用に充当される。

QPSは、九州大での研究成果をもとに小型人工衛星の研究・開発を行うベンチャー企業として2005年に創業された。同社は、これまで九大を代表機関とした「地球観測等に用いる超小型汎用人工衛星QSAT‐EOSの開発」プロジェクトで衛星開発の総合支援や、千葉大向け小型衛星先端環境災害設備の開発・製造、マイクロデブリ観測センサの開発・製造等を行うなど着実に実績を残している。

QPSは、今回新たに革新的な小型衛星用SARアンテナを開発した。SARアンテナを搭載することで、従来のSAR衛星と比較して、高分解能を維持しながら、圧倒的な軽量・小型、省電力、低コストの優位性を持つ小型SAR衛星の開発を目指している。地球観測を目的とする衛星は、主にデジタルカメラのように撮影する光学衛星とレーダーを活用するSAR衛星に分類される。

SAR衛星は、可視光線や赤外線よりも波長の長いマイクロ波を使用し、人工衛星を移動させることによって仮想的に大きなアンテナとして働かせることで高分解能観測を実現するもの。

光学衛星が夜間や悪天候時に観測できないのに対し、SAR衛星は昼夜・天候に関係なく観測でき、マイクロ波の解析により対象物の識別や特定など詳細情報を取得することができ、防災、防衛、環境調査などさまざまな分野での活用が期待されている。一方、従来のSAR衛星は大型のアンテナと多量の電力消費が必要であることから、重量の増加と高コストが課題となっており、小型化技術の開発が喫緊の課題となっていた。

今回、QPSが開発した小型衛星用SARアンテナは、展開時の直径が3.6メートルと大型でありながら打ち上げ時には小型に格納できる、収納性が高いパラボラアンテナ。

今後開発する衛星には、①軽量・小型化:従来比約1/20という100キログラム以下の世界初の軽量化を実現、②高分解能:1メートルという高分解能で多彩なアプリケーションでの活用が可能、③低コスト:SAR衛星の開発・製造を従来比約1/100で実現するもので、数百億円かかる大型衛星の費用を数億円にコストダウンを図る―といった特長がある。

QPSは今後、独自開発のアンテナを搭載した小型SAR衛星の開発・製造、打ち上げによる地球観測の実証実験を経て、アンテナ単体や小型SAR衛星の製造・販売、自前の衛星を通じて取得した衛星画像の販売など、ビジネスモデルの確立を図っていく。

将来的には、小型SAR衛星を多数打ち上げることにより、「いつでもすぐに地球観測ができる」先進的な社会インフラの構築を目指し、新しい経済価値の創出に貢献していく。

INCJでは、健康・医療・介護、素材化学、ロボット、AI・IoT・ビッグデータに加えて、宇宙ビジネスを重点投資領域の一つとして投資活動を進めている。宇宙ビジネスは、技術進歩に伴う衛星の小型・高性能化等により、近年、飛躍的に市場規模を拡大している。地球観測衛星のニーズは、気候変動、国際情勢、エネルギー資源などの観点から拡大しており、国の政策とも緊密に関わっている。

今回、QPSが開発した革新的な小型アンテナは、防災、防衛、環境調査など光学衛星ではカバーできない領域を担うSAR衛星の展開を加速するもので、INCJの投資にふさわしい。

QPSは、創業前から九州地域における宇宙関連の地場企業の育成・共創に取り組んでおり、INCJはこうした地域活性化活動についても支援している。QPSへの支援を通して、大学発ベンチャー企業と大企業によるオープンイノベーションを加速させ、日本の宇宙産業の国際競争力が強化されることを期待している。