2021年4月6日 AI病虫害画像診断システムを提供開始 事業者のサービスを通じてAI病虫害診断の普及へ

農研機構、法政大学、ノーザンシステムサービスは、「農業データ連携基盤(WAGRI)」を通じ、農業情報サービス事業者向けのAI病虫害画像診断システムの提供を開始する。これを利用することで、各事業者は一般ユーザ向けの病虫害画像診断サービスを構築・提供することができる。また、このシステムは、一般ユーザから送られた画像を蓄積して活用し、継続的に診断精度の向上を目指す。3月15日には、第1弾として、トマト・キュウリ・イチゴ・ナスの4種類の野菜・果物を対象とする葉表病害判別器が公開された。

 

病虫害の拡大と、その対応に課題

日本の農業現場には多様な病害虫が発生しており、その防除には多大な費用と労力が費やされている。また、近年の地球温暖化の影響で、病害虫による被害が拡大するとともに、これまで発生しなかった病虫害が発生する懸念がある。高齢化する生産者や、それに伴う熟練者の減少への対応、経験の浅い新規就農者・新規参入者の安定営農を支えるためにも、高度な専門性を必要とする病虫害の診断・防除の充実した支援は欠かせない。

一方で、人工知能(AI)による画像判別技術は、特に2010年代後半から急速に精度が上がり、人間の認識能力を超えつつある。このため、農業現場からの病虫害診断要請への迅速な対応を目指し、AIによる画像判別を活用した手軽で安価な病害・虫害診断サービスが求められている。

こうした状況の中、農林水産省人工知能未来農業創造プロジェクト「AIを活用した病害虫診断技術の開発」では、病害虫AI診断コンソーシアム(代表機関:農研機構、参画30機関)が、2017~2021年の5ヵ年でトマト・キュウリ・イチゴ・ナスの主要病害・虫害に対応できるAI判別器を開発している。

このプロジェクトでは、24都道府県の公設試験場が参画し、専門家による確度の高い正解ラベル付き病虫害画像を大量に収集し、精度の高いAI判別器の開発が進んでいる。研究グループは、この技術を広く普及させるため、多くの民間農業情報サービス事業者が手軽に利用できる仕組みづくりを進めた。

 

AI病虫害画像判別器の作成に成功

農作物の病害虫の形態や病徴は似通っているものが多いため、AI画像判別器を十分な診断精度が出せるまでに学習させるには、多くの専門家が多大な労力と時間をかけて正解ラベル付き画像(病虫害の正確な診断がついた画像)を大量に集める必要がある。

今回、農研機構と都道府県公設試験場の専門家が、それぞれの専門分野の病害・虫害画像を大量に収集した。収集した画像を用い、機械学習に精通した法政大学、ノーザンシステムサービスと共同研究を進めることで、実運用精度の高いAI病虫害画像判別器を作ることに成功した。

具体的には、法政大学が開発したトマト・キュウリ・イチゴ・ナスの4作物の葉表を対象とする病害診断システムの提供が開始される。このシステムでは、現在、農業現場で問題になっている主要な病害数種(一例として、トマトについてはうどんこ病、灰色かび病、すすかび病、かいよう病など)に罹患している確率を計算する。専門家が各病害1種類あたり数百から約6000枚の診断付き学習画像を使って、背景を除去したり、様々なシチュエーションに応じた画像を人為的に合成して画像枚数を増やすことで、実用精度で72.6%~89.2%を達成している。この精度は、学習に使った画像の撮影場所とは全く異なる地域で撮影した画像を使って検証した結果で、実運用に耐えられるレベルである。

ノーザンシステムサービスは同じく、トマト・キュウリ・イチゴ・ナスの4作物の葉表、葉裏を対象とするAI虫害画像判別器を開発した。こちらも実用精度で82.1%~85.4%を達成。現在、WAGRIへの搭載を準備中だが、作業が終わりしだい公開するとしている。

これらの判別器は、AI病虫害画像診断のためのWAGRI‐APIとして民間事業者が利用可能な形で提供される。さらに、一般のユーザからAPIを通じて病虫害判定のために送信された画像は、個人情報の保護に配慮しながら農研機構の統合データベースで蓄積・管理され、データの精査、専門家による再ラベリング、半教師付き学習などにより、更なるAI病虫害画像判別器の精度向上に利用される。

AI病虫害画像判別WAGRI‐APIは、WAGRI利用会員を対象に、公開後1年程度の期間、無償で提供される。WAGRIを利用するには、事前に有料の会員登録を行う必要がある。

また、「農業データ連携基盤協議会」の会員(WAGRI利用会員とは別で無料)は、AI病虫害画像判別WAGRI‐APIの活用イメージを無料の携帯端末デモアプリで体験することができる。

 

開発スピードの加速化に期待 日本の農業に貢献していく

現在、農研機構では、社会ニーズの高い園芸作物や果樹、野菜の主要病害・虫害の画像収集を進めており、2021年度中に順次、追加のAI画像判別器をWAGRI‐APIに搭載していく予定。法政大学、ノーザンシステムサービスがこれまで培ったノウハウを活用し、先行する4つの作物で識別能力が向上した判別器を転移学習に使用することで開発スピードを加速していくとしている。また、現在実現できる精度の中で病害虫防除の役に立ちながら、継続して成長するAI病虫害画像診断システムの枠組みにより、日本の農業に貢献していく方針だ。


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