2018年11月28日 AIで土石流を検知 産総研が次世代センサーシステムを開発

国立研究開発法人産業技術総合研究所集積マイクロシステム研究センターの研究チームは、AI(人工知能)による次世代型の土石流検知センサーシステムを開発したと発表した。

国土交通省国土技術政策総合研究所と共同で研究を進めていたもので、新システムは、汎用部品を用いた安価なセンサーを土石流が発生する地域に複数、面的に配置して、センサーからの波動波形をAIによって解析して真の土石流だけを検知できる。

研究チームでは、土石流が頻発する桜島で、2017年に約1か月間、複数のセンサーの振動データを収集して学習データを生成し、土石流判定AIソフトウェアを開発した。このソフトウェアに対して、桜島の実データで交差検証を行ったところ、誤検知なしで全ての土石流を検知できる見込みを得た。従来の手法では誤警報が約95%にも達しており、AIを用いた今回開発したシステムの有用性を確認できたという。

今回開発したシステムの詳細は、今年10月17日から19日に千葉県千葉市の幕張メッセで開催されたMEMSセンシング&ネットワークシステム展2018で発表され、注目を集めた。

 

年間1千件の土砂災害

日本は国土の多くが山地であり急な斜面が多く、梅雨・秋雨の時期や台風の際には大量の降雨があり、平均して年間1000件程度の土砂災害が発生している。土砂災害の中でも土石流は高速で、発生後短時間で集落に到達することも多いため、いち早く土石流の発生や予兆を検知し、速やかに避難することが被害を軽減する上で重要。

これまで土石流検知に広く用いられてきたワイヤーセンサーは、土石流がワイヤーを切断すると警報が出る仕組みであるが、一度ワイヤーが切れたら張り直す必要があり、第2波・第3波の土石流が連続して発生した場合は検知できない。また、動物がワイヤーを切断することなどによる誤警報も発生している。

そこで、振動センサーを用いて土石流の発生により大きな石などが川底や護岸などに衝突して発生する振動から土石流を検知する試みがなされてきたが、土石流以外の要因で発生する雨、風、地震、火山性微動などの振動による誤警報の問題が指摘されている。

従来、さまざまな土石流検知センサーが開発されてきたが、一般的に維持管理費も含め非常に高価で、低廉化も課題だった。今回、センサーやAIなどの技術に精通した産総研と土砂災害の発生メカニズムやハード・ソフト対策に精通した国総研は、従来の土砂災害検知センサーの課題解決を目指し、平成28年12月から最先端のAIやIoT技術を導入した「次世代型土石流災害検知センサー」を開発するために共同研究を進めてきた。

 

「点」でなく「面」で把握

研究開発のポイントは二つ。一つは土石流の可能性のある現場の多数の振動センサーの波形データから、AI解析によって土石流の振動波形だけを検知すること。振動センサーはあらゆる振動を拾うが、土石流以外の振動を土石流と誤判定することがあってはならない。このため、AIの機械学習により、土石流による振動だけを識別する方法を実現した。土石流が頻発する桜島を選び、国総研の協力で質の良いラベル付けされた学習データが得られたことがその実現に寄与している。

二つ目は、多数の振動センサーを配置した、いわば「面」による土石流検知。従来、土砂災害関連の計測機器やセンサーの多くは高価であるため、単体での現場設置、つまり「点」での検知となることが少なくなかった。研究チームでは、複数のセンサー配置方式を考案。しかも安価で普及しやすい実装形態で実現した。

今回開発した土石流検知システムによる土石流の検知は、実時間での検知ではないため、研究チームでは、現場のコンピュータに機械学習が完了した土石流検知部ソフトウェアを実装して実時間での土石流検知を行う。さらに計測データと質の高い学習データを蓄積して、桜島以外での箇所でも土石流を検知できることを実証する。また、将来の普及を見据えて、安価で耐久性のあるセンサー開発を継続する。


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