2021年3月1日 訪問介護は見放されたのか? 2021年度報酬改定=結城康博

地域で奮闘されているサ責やヘルパーに、心からのエールをお送り致します。日本の在宅介護を支えているのは皆さんです。今は暗澹とした気持ちだろうとお察ししますが、ここは是非めげずに頑張って頂きたい。

今回のテーマは訪問介護です。誰かが言わなければいけない話ではないでしょうか。

4月の改定で変わる各サービスの介護報酬が公表され、訪問介護の新たな基本単位数も明らかになりました。どの時間区分も1単位増。1時間以上1時間半未満のみ2単位増でした。他のサービスと比べると明確な冷遇で、最も低い評価となっています。

厚生労働省の気持ちも少しは分かります。これまでのプロセスで様々な議論があり、紆余曲折を経てこうした配点になったのではないでしょうか。

でも結果は結果。既にヘルパーの有効求人倍率は15倍を超えていますが、人手不足は今後ますます悪化していくでしょう。必要なサービスを受けられない高齢者も、今後さらに増えていくと懸念されます。

過去の累次の引き下げで今の状況になったのに、1単位増ではまったく話になりません。国は表向き「訪問介護は大事」と言ってきましたが、結局のところ見放したということでしょう。私と同じ捉え方をしている人は少なくないと思います。違うと言うなら是非、どこかの機会で広くアナウンスして頂きたい。

問題は業界の関係者にもあると言わざるを得ません。

議論に関わった団体はどこも、自分達の担うサービスにお金を持ってくることばかりに腐心するきらいがあります。より大局的な視点を重んじて動くプレイヤーがいない、あるいは非常に少ないんですよね。

このため、全体でプラス0.7%という小さいパイを我先にと奪い合う構図になり、政治的な影響力の強いところ、声の大きいところがそれを制することになりました。本来ならもっとご利用者の立場に徹して交渉にあたるべきだった、と指摘させて頂きたい。

訪問介護は残念ながら有力な事業者団体を持っていません。これが今回の結果に至った背景の1つです。訪問介護が業界内の争奪戦に惨敗した、と評することも可能でしょう。

もっとも、こうした力学が働くのは今に始まったことではありません。ですから、きっと最後は厚労省が的確な判断を下してくれると期待していました。今回は関係者の声に引きずられてしまったのではないでしょうか。

これは何度でも言わせて頂きたいのですが、在宅介護の土台は訪問介護です。科学的介護を進める加算も重要でしょう。定期巡回や小規模多機能も重要でしょう。でも多くの高齢者の在宅生活を現に支えているのは、他ならぬ訪問介護なんです。

高齢ヘルパーの引退の加速も見込まれるなか、今回の改定で思い切った手を打たなかったのは完全な失策です。15倍という異次元の有効求人倍率を放置するのだとしたら、その罪は重いと言わざるを得ません。確かに加算などプラスの部分もありますが、事業所の負担も増えるので状況の悪化は止まらないでしょう。

訪問介護は引き続き、他の介護サービス、あるいはショッピングモールやスーパー、飲食、警備など他の業界との人材獲得競争に負けていきます。若い人はもちろん、子育てが落ち着いた人も一線を退いた元気なシニアも、ほとんど入って来てくれないことは明白です。地域包括ケアシステムという構想の「メルヘン化」もますます進むでしょう。

私は大学で介護人材を育てており、今も毎年10人超の新卒の若者を介護現場へ送り出しています。目下就活中の学生にも介護職に就いてもらいたいですが、さすがにもう訪問介護事業所は勧められません。以前は新卒で入る教え子もいたのですが、あまりにも処遇が悪すぎます。未来ある若者のことを考えると、もはや彼らを訪問介護事業所へ送るのは難しくなってしまいました。

 


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