2019年4月26日 着るだけで心電図計測が可能 産総研と名大がスマートウェアを開発

産業技術総合研究所(産総研)と名古屋大学は、医療機器を目指した心電図を計測できるスマートウェアを国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)プロジェクトで開発した。このスマートウェアは、皮膚との接触が良好な起毛ドライ電極や皮膚とドライ電極間の接触状態を模擬できる独自のモーションアーティファクト評価装置の開発と、これらを使って電極構造・配置の設計を最適化することにより実現した。着るだけで心臓疾患の正確な診断に必要な12誘導心電図の計測を可能とし、患者や看護師の長時間にわたる心電図計測の負担などが軽減できる。今後、産総研と名大は、臨床試験を実施して医療機器としての認可取得を目指す。

ここ数年、ドライ電極を形成した衣類を着るだけで心電計測を行うウェアの開発が進んでおり、日常生活での生体信号計測への応用が期待されている。しかし、現在製品化されている既存の心電計測ウェアでは、電極数が少なく限られた方向からの計測しかできないため、心拍数の計測と不整脈、心室細動の検知に用途が限られていた。

また、得られる信号波形に関しては、皮膚とドライ電極間の接触の不安定性のために、呼吸や会話などの体動によって心電波形に「モーションアーティファクト」と呼ばれる乱れが生じるため、医療的意義のある波形形状を有した心電図計測には適さず、医療機器として用いるための課題となっていた。

こうしたなか、NEDOプロジェクトでは、2016年度からフレキシブル複合機能デバイス技術の開発で心電計測ウェアの開発に取り組んできた。このプロジェクトで産総研と名大は、繊維を帯電させ電気力線に沿って加工対象に吹き付けることで、接着剤の塗布された加工対象表面に短繊維を起毛した状態で植え付ける静電植毛技術により、加工表面の手触りが柔らかな風合いのベルベット状で皮膚との接触が良好な起毛ドライ電極と、皮膚とドライ電極間の接触状態を模擬できる独自の評価装置を開発した。

さらに、同起毛ドライ電極を用い、同評価装置を使って電極構造・配置の設計を最適化することにより、従来の心電計測ウェアの皮膚とドライ電極間の接触不安定性の課題を解決し、モーションアーティファクト(画像診断での動きにより不明瞭な状態)の影響が軽微な、波形の安定した心電図を計測できるスマートウェアの開発に成功した。

病院や在宅医療での長時間にわたる心電図の計測がウェアを着るだけでできるため、患者や看護師の負担などが軽減できる。長時間の計測により、病院の検査だけでは見つけにくい、たまにしか生じない病気の症状の発見も期待される。

また、今回開発した起毛ドライ電極とモーションアーティファクト評価装置は、心電図に限らず、筋電図、脳波、体内インピーダンス(からだに微弱な電流を流してインピーダンス(電気抵抗値)を測ることで体脂肪率などを推定することができる)5計測などにも応用可能。バイタルサイン計測を行うスマートウェアへの幅広い展開も期待できる。今後、産総研と名大は、臨床試験を実施して医療機器としての認可取得を目指す。

この研究成果の詳細は、4月11日に英国科学雑誌「サイエンフィティック・リポーツ」にオンライン掲載された。

 

 


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