農研機構農村工学研究部門は、水田の水管理をスマートフォンやパソコンでモニタリングしながら遠隔操作したり、自動で給水と排水を制御できる国内初のシステムを開発した。

水稲栽培では、日々の水管理が労働時間の約3割を占めており、大面積で分散した水田を管理する農家にとって大きな負担となっているが、今回開発されたシステムでは、既存の給水バルブと排水口にインターネット通信機能とセンシング機能を付加した制御装置を追加することで、給水バルブと排水口を遠隔・自動で制御できる。ユーザーは、スマートフォンやパソコンなどから、どこにいても水田の水位や水温などのデータを閲覧することができ、状況に応じていつでも自由に水管理をすることができる。さらに、サーバー上の水管理ソフトを使うことで、任意の水深を自動で維持したり、設定した間隔で間断灌漑をしたり、水温上昇を目的とした夜間灌漑をしたりと様々な水管理を自動で行うことができる。

水管理労力や用水量は水田枚数や立地条件等で大きく変化するが、農研機構の実証圃場では、水管理の労働時間を約80%削減することができ、出穂期から収穫までの期間の用水量も約50%削減することができた。

システムは、今年度中に大手農業系企業グループから発売される予定。目標価格は自動給水バルブ・自動落水口、各1機あたり10万円、基地局20~30万円、通信費用は月2000~4000円としている。

米の収量や品質の向上には、生育ステージや気象状況などに応じた灌漑操作や排水操作、水位調節といったきめ細やかな水管理が求められる。

この水管理には、水稲の総労働時間の約2~3割が費やされており、特に大規模農家では離れた場所にある複数の水田で耕作するため、全ての水田の水回りを管理するだけでも多大な時間を要してしまう。さらに、複数の品種や栽培方法(移植と直播栽培)などを組み合わせているため、必然的に水管理が複雑化している。

水を管理するシステムについては、これまでも、一定の水位を維持する給水のみの管理装置は存在していたが、こうした現状を打破できる技術はなかった。そこで、農研機構は、水田の水管理をスマートフォンやパソコンでモニタリングしながら遠隔操作したり、自動で制御できるシステムを開発した。

 

開発されたシステムの特徴

開発されたシステムでは、給水と排水の両方を水田のデータを見ながら遠隔・自動で制御でき、水管理ソフトによって複雑な水管理も自動で制御できる。制御装置は太陽光発電と内臓バッテリーのみで稼働するため電源がいらない。既存の給水バルブ、排水口に後付けで設置することができるため、大規模な設置工事を必要としない。国内の主要な給水バルブに対応しており、給水と排水の制御装置は同一構造で共用することができる。

また、日々の水まわりや給排水操作がなくなるため、大幅な水管理労力の削減が可能となる。水管理労力は水田枚数や分散状況等により大きく変動するが、所内の実証圃場では、水管理に要した時間は、一般的な給・排水装置を設置した対照水田に対して、約80%削減できた。

さらに、システムの利用により適正な水管理が実現されるため、用水量の削減も可能となる。用水量は立地条件等により変動するが、実証圃場では、出穂期から収穫までの期間の積算用水量は対照水田の約50%に削減することができた。

 

規模拡大や6次産業化に期待 最適水管理アプリの開発を推進

このシステムについては、水管理労力の大幅な削減により、大規模農家のさらなる規模拡大や余剰労力を活かした6次産業化への取り組みに貢献し、所得向上に寄与すると期待されている。

目標価格は、自動給水バルブ・自動落水口、各1機あたり10万円、基地局20~30万円、通信費用は2000~4000円/月となっている。今年度中に大手農業系企業グループから発売される予定だ。

また、農研機構農村工学研究部門では、現在、気象データやコメの発育モデルなどと連携することで、品種や地点、移植日を事前に登録するだけで、田植から収穫までの最適な水管理スケジュールを組み立て、自動で水管理をする「最適水管理アプリ」を開発している。このアプリの利用により、さらなるコメの収量・品質の向上が期待できる。