2019年12月11日 生物多様性保全と温暖化対策は両立可能 気候安定化の努力で生物多様性の損失を抑えられる

(国研)森林研究・整備機構森林総合研究所は、立命館大学、京都大学、(国研)国立環境研究所、東京農業大学と共同で、パリ協定が目指す長期気候目標(2℃目標)達成のための温暖化対策が、森林生態系を含む世界の生物多様性に与える影響を評価した。その結果、2℃目標の達成により、生物多様性の損失が抑えられることが予測された。

温暖化を放置しておくと、気温上昇により生物の生息環境が悪化する恐れがある。2℃目標達成のためには新規植林やバイオ燃料用作物の栽培といった土地改変を伴う温暖化対策が必要だが、同時に生物のすみかも奪い、多様性を低下させてしまう可能性がある。

今回の研究では、2℃目標達成のための温暖化対策「あり」と「なし」それぞれの場合における将来の生物多様性損失の度合を、複数の統計学的な推定手法を使って世界規模で比較した。その結果、対策「あり」で2℃目標を達成した方が、「なし」のままで温暖化が進行してしまった場合と比べて生物多様性の損失を抑えられることが世界で初めて示された。

 

温暖化対策が生物多様性に 負の影響をあたえる可能性

森林などの豊かな自然環境が育む生物多様性は、人類が生存するために欠かせない様々な恩恵をもたらしている。しかし、過去100年間の土地改変等の人間活動により、地球上の生物多様性は急激に失われてきた。これに加え、気候変動も生物多様性にとって脅威となると考えられている。

今までも、エネルギー消費量の削減や再生エネルギーの導入等により気候変動を抑制することは、生物多様性の損失を抑えるうえで重要であると報告されてきた。しかし、これまでの研究は温室効果ガスの大幅な削減に必要な新規植林の拡大やバイオ燃料用作物の栽培など、いわゆる温暖化対策による大規模な土地改変による負の影響を考慮していなかった。

温暖化対策がかえって生物多様性に負の影響を及ぼしかねないという可能性についてはこれまでも議論されてきたが、それを科学的に裏付ける研究はなかった。そこで、今回、研究グループは、温暖化対策「あり」と「なし」のそれぞれの場合における生物多様性の損失の程度を、複数の統計学的な推定手法を使って世界規模で初めて比較・評価した。

 

温暖化対策の有無それぞれの場合の生物多様性の損失の程度を比較・評価

今回の研究では、世界中の生物多様性を評価するため、5億件以上の生物分布情報から、5つの分類群(維管束植物、鳥類、哺乳類、両生類、爬虫類)に属する8428種の生物種を選び出し、情報を整理した。さらに、このデータをもとに、地球規模で生物の生息に適した地域(潜在生息域)を予測するための生態ニッチモデルを構築した。

完成したモデルに将来の気候や土地利用の条件を当てはめると、その条件に見合った生物の潜在生息域を予測し、地図上で可視化できるようになる。将来の気候条件としては、「2℃目標を達成するための温暖化対策を推進する場合:対策あり」と、「なにもせず温暖化が進行した場合:対策なし」の2通りを想定。さらに、5種類の異なる社会経済シナリオを想定し(「持続可能」、「中庸」、「地域分断」、「格差拡大」、「化石燃料依存」)、それぞれの社会経済状態に見合った将来の土地利用変化を予測するモデルと生態ニッチモデルとを統合することで、シナリオごとの生物多様性損失の程度を比較・評価した。

 

2℃目標を達成することで地球規模の生物多様性の損失を抑えられる

シミュレーションの結果、温暖化対策による大規模な土地改変が野生生物にもたらす負の影響を考慮したとしても、温暖化対策を積極的に進めて2℃目標を達成することにより、地球規模の生物多様性の損失を抑えられることが分かった。

このうち、5種類の社会経済シナリオのシミュレーション結果を比較すると、持続可能な社会の構築に向けた取組を積極的に推進するシナリオで、生物多様性の損失が最も少ないことが示された。その要因として、この持続可能シナリオで想定した強い土地利用規制等の取組が、高い生物多様性を保つ原生林などの自然環境の保全につながることがあげられている。

この結果は、生物多様性保全と2℃目標達成を両立できるかどうかは、社会や経済の将来発展の速度や方向性に左右されることを示している。

 

持続可能な開発目標の達成への貢献に大きな期待

今回の研究で開発された手法により、温暖化対策と生物多様性の関係を世界規模で分析することが可能となった。この手法は、温暖化対策だけでなく、持続可能な社会のための様々な政策が生物多様性に及ぼす影響の評価にも応用することができる。今後、今回開発された手法を用いて、複数の持続可能な開発目標を達成するためのロードマップを探索することが可能となる。


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