2022年6月24日 漢方「大建中湯」の作用機構を解明 炎症性腸疾患における効能が科学的に明らかに

理化学研究所(理研)生命医科学研究センターの研究チームは、マウスを用いて炎症性腸疾患における漢方「大建中湯」の大腸での働きを科学的に解明した。漢方「大建中湯」の効能を最大限に生かし、炎症性腸疾患のより効果的で効率的な治療につながると期待できるという。

漢方「大建中湯」は、胃腸の調子を整える場合や大腸がん手術後の腸閉塞の予防・改善のための薬として広く用いられている。今回、研究チームは、大建中湯が大腸において特定の腸内フローラの増加を促し、産生される代謝物プロピオン酸が大腸上皮を介して免疫細胞に作用することで大腸を健全に保ち、炎症から腸管を保護するメカニズムを明らかにした。

漢方は奈良時代に中国から日本に伝えられた伝統医学をもとに、日本の風土に合った独自の発展を遂げ、現在ではさまざまな疾患の予防・治療に用いられている。漢方は、一般的に薬局で購入できる身近な医薬品の一つだが、臨床の現場でも広く使用されている。

特に、大建中湯は消化管疾患の予防・治療のほかに、大腸がん手術後の腸閉塞予防や炎症性腸疾患および集中治療中の患者の胃腸の働きを助ける目的でも使用されている。しかし、これまで医療従事者が大建中湯の効能を実感することはあっても、作用メカニズムはほとんど明らかになっていなかった。

炎症性腸疾患は国の難病指定を受けている疾患で、日本でも4万人以上の患者が存在し、さらに増加の一途をたどっている。炎症性腸疾患の原因には、遺伝的背景や環境による外的要因だけでなく、食事の欧米化による腸内フローラ(腸内細菌叢)の影響も指摘されているが、詳細はまだ明らかになっていない。研究チームは、炎症性腸疾患のモデルマウスにヒトに処方される量と等量の大建中湯を経口投与し、大腸における腸内フローラの変化や産生される代謝物と免疫応答を解析した。

 

下痢が緩和し体重減少も抑制

炎症性腸疾患のモデルマウスとして、デキストラン硫酸ナトリウム塩を自由飲水させることで大腸に炎症が生じたマウス(炎症誘導マウス)を用いた。この炎症誘導マウスは、大腸の炎症と免疫応答の関係性が実際のヒト炎症性腸疾患と類似している。5日間デキストラン硫酸ナトリウム塩を与えて、体重の変化を調べたところ、炎症誘導マウス群では重篤な下痢症状と体重の大幅な減少が見られたが、あらかじめ大建中湯をエサに添加し投与した炎症誘導マウス群では下痢の症状が緩和されただけでなく、体重減少も抑制された。

近年、細菌叢が代謝する代謝物が直接または間接的に免疫応答に影響を与えることが報告されている。そこで、それぞれのマウス群の糞便における代謝物を解析したところ、大建中湯を投与した炎症誘導マウス群ではプロピオン酸が有意に増加していることも分かった。

これまで、医療の現場で医療従事者が漢方の効果を実感しているものの、その作用メカニズムが明らかになっていなかったために、使用用途は医療従事者の経験に基づく判断でしか処方できていなかった。大建中湯は胃腸の動きを助ける目的からさまざまな患者に処方されているが、今回の発見により作用メカニズムを理解した上で大建中湯の効果を最大限に生かし、臨床所見に応じた適切な処方が可能になるものと期待できる。


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