2022年6月28日 水稲品種「にじのきらめき」の暑さ対策 高温条件下でも外観品質低下が少ないメカニズム

近年の地球温暖化に伴い、登熟期が高温になりやすい地域での一等米比率の低下が深刻化する中、農研機構が育成した水稲品種「にじのきらめき」が、普及地域での4年間にわたる調査の結果、高い玄米外観品質が得られることが実証された。また、「にじのきらめき」には登熟期の高温条件下でも穂の温度が上がりにくい「高温回避性」のメカニズムを有することを明らかにした。

 

〔温暖化に伴う登熟期の高温により「白未熟粒」が多発〕

近年の温暖化に伴う登熟期の高温により、コメのデンプン蓄積過程が阻害され玄米の一部が白濁する白未熟粒の発生が多くなっている。白未熟粒が多発すると玄米の見た目(外観)が悪くなるため、玄米の等級が下がって市場での価値が低下し、生産者の所得が下がってしまう。

2019年には、「コシヒカリ」の主要生産地である新潟県でも8月初旬から中旬の異常高温と一時的なフェーンの発生により白未熟粒が多発し、例年では80%程度だった「コシヒカリ」の一等米比率が20%まで落ち込み、コメの品質に甚大な被害が生じた。

「コシヒカリ」は、日本で最も広く普及している水稲品種だが、登熟期の高温に対してあまり強くなく、登熟期にあたる7月下旬から8月中旬が高温となる関東以西では、高温登熟性に優れた品種が強く求められている。

 

〔高温登熟性に優れる良食味多収水稲品種「にじのきらめき」を育成〕

農研機構中日本農業研究センターは、高温登熟性に優れる良食味多収水稲品種として、2018年に「にじのきらめき」を育成した。この品種は、今回現地調査を行った新潟県・群馬県・岐阜県のほか、茨城県・千葉県・静岡県などで普及が進んでいる。

これまでの観察から、「にじのきらめき」は白未熟粒が発生しにくく、高温登熟性に優れていることは分かっていたが、「コシヒカリ」と比べてどの程度高温に対して強いのかなど、詳細な調査は行われていなかった。加えて、高温登熟性のメカニズムは全く分かっていなかった。

 

〔両種の玄米外観品質を調査〕

研究では、育成地のある新潟県と、登熟期にあたる8月の気温が高い群馬県・岐阜県において、公的研究機関、生産者の協力を得て、2018年から2021年の4年間にわたって気温と「にじのきらめき」、「コシヒカリ」の玄米外観品質(整粒歩合)について調査が行われた。

その結果、白未熟粒の発生に密接に関与する出穂後20日間の日平均気温の上昇に伴って、「コシヒカリ」では整粒歩合が大きく低下するのに比べ、「にじのきらめき」では低下が緩やかであることが明らかになった。一般的に整粒歩合70%が一等米の目安となるが、日平均気温が28度の条件で比較した場合、「コシヒカリ」は整粒歩合70%をはるかに下回った。

一方、「にじのきらめき」は70%程度を維持できたことから、本品種の優れた高温登熟性が実証された。しかし、日平均気温が28度以上となると「にじのきらめき」でも整粒歩合は70%を下回り、優れた高温登熟性にも限界があることも同時に判明した。

次に、「にじのきらめき」の優れた高温登熟性を支えるメカニズムを解明するため、農研機構中日本農業研究センター上越研究拠点(新潟県上越市)の試験ほ場にて、登熟期の午前11時から12時の穂の温度(穂温)を実際に測定した結果、特に高温条件下において穂温が「コシヒカリ」に比べて低く維持できることが明らかになった。

また、この穂温の実測値と気温のデータより、農研機構農業環境研究部門が開発した穂温推定モデルを用いて「にじのきらめき」と「コシヒカリ」のそれぞれのパラメータを調整。上越研究拠点での過去2018年から2021年の登熟期における穂温を推定したところ、実測値と同様に気温が高くなっても穂の温度を低く維持できる傾向が認められた。

さらに、穂温推定モデルにおける「にじのきらめき」と「コシヒカリ」のパラメータを比較し、「にじのきらめき」のどのような特性が穂温の上昇を抑えるのに役立っているかを推定したところ、「にじのきらめき」では登熟期も穂が群落の中に隠れているために、穂への直射日射量が少ないことや、穂の周りの止葉の蒸散による冷却効果を受けやすくなっている可能性が示された。このことから、「にじのきらめき」の優れた高温登熟性には、登熟期の高温ストレスをイネ自らの能力で緩和する「高温回避性」のメカニズムが寄与していることが示唆された。水稲の高温登熟性については、これまで高温ストレスに耐えて高いデンプン蓄積能力を示す「高温耐性」については報告があるが、今回見出した「高温回避性」のメカニズムについては、世界で初めての発見である。

 

〔高温登熟性がより強化された品種の育成につながると期待〕

今回の研究により、「にじのきらめき」の優れた高温登熟性がいくつかの普及地域のほ場で実証された。出穂後20日間の日平均気温を28度程度に抑える作付けスケジュールを立てることで、栽培地域では「にじのきらめき」の高い玄米外観品質を保つことができると想定される。今後、作付け予定の生産者に高品質生産が可能な作付け時期の情報を提供するとしている。

また、今回の研究は、これまで「にじのきらめき」の高温登熟性の仕組みとして考えられていた高温耐性の他に、高温回避性が存在することを明らかにした。将来的には、「高温耐性」が高い品種と「高温回避性」が高い品種との交配による高温登熟性がより強化された品種の育成が期待される。


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