2018年5月9日 木を発酵して香り豊かなアルコールを製造 「木のお酒」という新たな可能性を開く技術開発

(国研)森林研究・整備機構森林総合研究所は、化学処理や熱処理を行わず、木材に食品用の酵素と酵母を加えてアルコール発酵する技術を開発した。この研究では、スギやシラカンバを原料にアルコール発酵して蒸留することで、それぞれの樹種に特徴的な豊かな香り成分を含むアルコールができた。製造されたアルコールは現段階では酒ではないが、今後、安全性が確認されることで、長い酒の歴史上で初めての「木のお酒」の製造が可能になると期待されている。

 

低迷する木材価格、困難な林業経営 未利用材の有効活用に期待が集まる

木材は、古くから建築材や木工品、紙の原料として利用されてきた。しかし、現状では、木材価格の低迷により、国内の林業は難しい経営を余儀なくされている。

このため、未利用材を有効に活用する方法の開発が進められている。近年では脱化石資源、グリーンエネルギーという観点から木材を原料に燃料用アルコールを製造する技術も開発されているが、コストの問題から大規模な実用化に至っていない。

また、樹木は食文化と密接に関係しており、日本では古くからスギ材を用いて樽や桶を製造し、醤油、味噌、日本酒などの保存に使用してきた。さらに、無垢のシラカンバ材などは割り箸や爪楊枝に利用され、食卓にも登場する。材以外の部分では、サワラやホオノキの葉を食品の包装、保存用途として使用している。

森林総研での取り組み

こうした中、森林総研では、木材の新しい前処理方法として、湿式ミリング処理という技術を開発した。この技術は、水中で木材を微粉砕することで熱処理や化学的な薬剤処理を行うことなく木材の糖化と発酵を可能にする。この技術を用いて木材をメタン発酵したりアルコール発酵したりして、木材からメタンガス燃料やバイオエタノールを製造する試みがなされていた。

木材を発酵可能にする湿式ミリング処理は、その装置が食品加工に利用されているだけでなく加える材料も全て食品用の添加物である。そこで、森林総研は、木材から発酵によりエネルギーを製造するのではなく、これまでにない利用分野の開拓ができるのではないかとの考えから研究を進め、その結果、この技術を使って木材に食品用の酵素と酵母を加えて原料樹木特有の香りに富んだアルコールの試験製造に成功した。

豊かな香り成分を含むアルコール

研究では、森林総研内(茨城県つくば市)で伐採されたスギ材と、北海道内で伐採されたシラカンバ材の樹皮を除き、チッパーとハンマーミルによりそれぞれを粗粉砕し、この粗粉砕木粉とミネラルウォーターを混合して、食品加工用ビーズミルにより湿式ミリング処理を行い、クリーム状のスラリーを得た。このスラリーに食品添加用の酵素(セルラーゼ・ヘミセルラーゼ)と酵母を混合し、タンク内で並行複発酵を実施。発酵後、遠心分離により上清を回収して、アルコール度数約2%の発酵液を得た。次に、この発酵液を減圧蒸留法により蒸留し、アルコール度数28%~30%の蒸留物を得た。

スギ糖化発酵液の蒸留物からは、スギ材特有の香りを感じられたが、この香り成分を分析した結果、スギ特有の香り成分であるテルペン類が多く含まれることがわかった。

また、シラカンバ糖化発酵蒸留物からは、材の香りからは想像できないような甘く熟した芳醇な香りが感じられたが、この香り成分の分析結果では、ウイスキーやブランデーを長期間樽熟成したときに生成する熟成香の成分が含まれていることが明らかになった。

このことから、この技術により試験製造されるアルコールには、長期間の樽熟成を経ずとも、木から醸し出される香り成分を豊富に含むことがわかった。また、樹種によっても含まれる香り成分が異なることから、1200種類とも言われる日本国内の樹木それぞれからバラエティーに富む香りを持つアルコールが製造できると考えられる。

「木のお酒」の製造に期待 技術の実用化に向け開発推進

この技術により製造されたアルコールは、現段階ではまだ酒ではなく、今後、安全性確認を慎重に行っていく必要がある。安全性が確認できれば、木から製造されたアルコールが紀元前4000年から続く長い酒の歴史の中で初めての「木のお酒」になる可能性がある。「木」から美味しい酒を製造する技術が実現できれば、日本各地の特徴的な樹木を用いた新しい産業が生まれ、国内の林業振興にもつながる。

森林総研では、今後、試験製造されるアルコールの成分分析を詳細に行い、安全性に関する知見を蓄積していく予定。また、産学官民で意見交換しながらこの技術の実用化に向けさらに開発を進めていきたいとしている。


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