2017年12月6日 新開発のシルクタンパク質素材 がんなどの疾病診断キットの低価格化に期待

農研機構生物機能利用研究部門は、遺伝子組換えカイコを使用し、抗体として働く性質をもつシルクタンパク質素材〝アフィニティーシルク〟の技術を活用して実用化に向けた新素材を開発した。

生体内に侵入した異物(抗原)に働く抗体は特定の種類のタンパク質などに結合する性質をもつことから、基礎研究から医療に至る幅広い分野で利用されているが、その製造コストが課題となっていた。

今回の研究では、この組換えカイコが産生した繭糸から調製したシルクタンパク質水溶液をコーティングした検査用資材「ELISAプレート」を用いることで、消化器系のがん(胃がん・大腸がん等)の腫瘍マーカーであるCEAを高感度で検出することに成功した。

この技術では、組換えカイコが産生した繭1個からCEA検出用のELISAプレートを20枚以上作製することができ、安価に様々な疾病診断キットを提供できると期待されている。

 

問題点を克服するための新しい組換え抗体生産技術

医療や基礎研究で利用されている組換え抗体は、主に動物細胞の大量培養系で生産されているが、その製造コストは非常に高くなる。また、大腸菌による生産系では、製造コストは抑制できるが、その反面、活性の高い抗体を得ることは難しく、菌体成分の混入による副作用も危惧されており、こうした問題点を克服するための新しい組換え抗体生産技術が求められていた。

そこで、農研機構生物機能利用研究部門は、低コストで優れたタンパク質生産系である組換えカイコを用いて、抗体として働く性質をもつシルクタンパク質素材を生産する技術を開発した。

 

開発されたシルクタンパク質素材 CEAを特異的に認識

〝アフィニティーシルク〟は、カイコが吐く繭糸のタンパク質である「フィブロイン」と一本鎖抗体(抗原―抗体反応に重要な抗体の可変領域だけを抜き出し再編成した分子)の融合タンパク質からなる組換えシルクタンパク質。今回は、胃がん・大腸がんなどの消化器系がんの腫瘍マーカーとしてよく知られているCEAを特異的に認識する新しいシルクタンパク質素材を開発した。

 

作製方法と技術の特徴 プレートを20枚以上作製可能

今回の研究では、まずCEAを特異的に認識する一本鎖抗体とフィブロインとの融合タンパク質を繭糸に発現する組換えカイコを作出した。次に、この組換えカイコが産生した繭糸を9M臭化リチウム溶液で溶解してシルク水溶液を作製した。さらに、透析や精製などの特別な処理は行わずに、シルク水溶液を直接96穴の解析用プラスチックプレートに注ぎ、4℃で一晩コーティングした。このELISAプレートを用いてCEAの定量試験を行った結果、高感度にCEAを検出することができた。

この技術の特徴としては、組換えカイコが産生した繭糸から、非常に簡便な方法で、標的の抗原に特異的な結合活性をもつシルクタンパク質素材(水溶液)を製造できることがあげられる。また、抗体活性を持つシルクタンパク質素材をコーティングしたELISAプレートで、腫瘍マーカーを定量的に効率よく検出すことができる。さらに、組換えカイコが産生した繭1個からELISAプレートを20枚以上作製することが可能で、安価に疾病診断キットを提供することができる。このほか、パウダーやフィルムに加工したアフィニティーシルクが、抗原特異的な結合活性を示すことも確認されている。

 

診断キット材料として利用に期待 製品化に向けた研究を進めていく

今回の研究成果については、がんなどの疾病マーカー以外にも、ウイルスや細菌などの病原体に特異的なアフィニティーシルクの開発を行い、それら病原体の感染有無の迅速な判断に用いる診断キットの材料としての利用が期待される。また、アフィニティーシルクの特異的な結合活性を利用した病原体の補集に役立つフィルターなどの開発にも期待が集まっている。農研機構では、今後、企業等とも協力して製品化に向けた研究を進めていく方針だ。


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