2019年7月22日 成人期の自殺念慮、思春期の影響大 東大院生らが世界初の科学的研究成果

わが国では、年間2万人以上が自らの手により尊い命を亡きものにしているが、東京大学大学院生らが調査研究で、思春期に家族や友人を大切にしていた人ほど自殺しにくいことが明らかとなった。思春期に形成される将来の行動様式や考え方などに影響を与える価値観と成人期での自殺念慮の発祥の関連を世界で初めて科学的な研究成果としてまとめたもの。今後は、家庭や学校などの教育現場で、身近な人を大切にするという価値を大事にすること、自分の価値にコミットすることを促すことが検討されると、成人期における自殺念慮の発症予防に、大きなインパクトをもたらすことが期待される。

思春期は人間の一生で、こころも身体も多様に変化し、将来の自分自身を形成するための重要な時期にあたる。脳の成熟は最終段階に至り、第二次性徴によりそれぞれの性に応じた様々な身体的な変化がみられる。また、親からの自立の問題、同世代の友人や異性との間で繰り広げられる人間関係の問題、将来自分自身がどうありたいかというアイデンティティの問題など、多くの悩みや葛藤を抱きながら成長していく時期となる。

思春期にどのような事柄に価値を置き(価値の領域)、その価値をどれくらい大事にし、その価値に沿って行動するか(価値へのコミットメント)ということをまとめた概念を思春期主体価値という。思春期主体価値はその後の人生における考え方、行動様式、健康やwellbeing(幸福)に影響を与えるといわれている。

しかし、これまでの研究では、思春期主体価値と成人期における自殺関連行動(自殺念慮、自殺の計画、自殺企図)の発症にどのような関連があるかについては明らかにされてこなかった。

東大大学院医学系研究科精神保健学分野の安間尚徳さん(大学院生)、川上憲人教授らは、思春期主体価値と自殺関連行動の発症との関連を世界で初めて検討することを目的として、一般住民を対象とした調査データをもとに研究を進めた。

2010年から追跡していた、20歳から50歳までの東京および周辺地域の住民を対象に、2017年に思春期主体価値に関する調査票への回答を求めた。思春期主体価値は、シュワルツ理論に基づいて独自に作成した11の価値領域に関する質問(①他人に迷惑をかけないこと、②他人に評価されること、③信念を持ち、それを大切に貫くこと、④経済的に成功すること、⑤社会をよくすること、⑥興味を持ったことを探求すること、⑦社会に対して影響力を持つこと、⑧積極的に挑戦すること、⑨身近な人を大切にすること、⑩よい学校を卒業すること、⑪安定した生活を維持すること)等に関する調査票を用いて、研究参加者に15歳時を想起して回答してもらった。

年齢、性別、婚姻歴、教育歴、就労状況、世帯年収、喫煙、飲酒、15歳時の暮らし向きなどの社会人口学的統計と自殺関連行動の生涯経験、過去12ヵ月の経験の有無に関しては2010年時のデータを用いた。思春期主体価値と自殺関連行動の発症の関連について、社会人口学的統計を調整した上で、統計学的な手法によって検討。解析対象者は2598 人(男性44.3%、平均年齢38.10歳)にのぼった。

思春期で身近な人を大切にすることを重要な価値としたことは自殺念慮の生涯経験、過去12ヵ月の経験と有意な負の関連を示し、価値にコミットすることもまた、自殺念慮の過去12ヵ月の経験と有意な負の関連を示した。

これらは社会人口学的統計要因を考慮した上でも同様の結果となった。思春期主体価値と自殺の計画、自殺企図との間には有意な関連はみられなかった。

この研究成果は、世界で初めて思春期主体価値と成人期の自殺関連行動の発症との関連を明らかにしたといえる。研究参加者は過去のことを思い出しながら回答しているため、直接的な因果関係までは明らかになっていないが、思春期の価値形成は、成人期の心の健康の保持・増進に大きなインパクトを持つと考えられる。


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