2018年6月20日 感染症を低減する生態系管理手法の開発に期待 森のネズミと暮らすカニムシはマダニを捕食する

(国研)森林研究・整備機構森林総合研究所は、森に生息するネズミと共生する「オオヤドリカニムシ」がマダニの新たな天敵であることを発見した。

マダニはSFTS(重症熱性血小板減少症候群)などの感染症のウィルスや細菌を媒介することが知られており、最近ではシカなどの野生動物の密度増加に伴い、人里での増加が懸念されている。

今回の飼育実験では、オオヤドリカニムシにマダニの幼虫を与えると直ちに捕食し、カニムシと同程度の体サイズのマダニ成虫を与えても80%程度の確率で捕食できることが分かった。

オオヤドリカニムシは、ネズミの密度が高いドングリが豊富な森林で、ネズミと共生しながら十分な個体数を維持し、マダニの天敵として機能を発揮している可能性がある。今回の研究成果も踏まえ、森林総合研究所では今後、生物多様性が豊かな森林が野生動物由来感染症の低減にどのように役立つかを明らかにし、その結果に基づく適切な森林管理手法を開発していくとしている。

 

野生動物管理を含む適切な生態系 管理手法を開発するための研究

現在、人の感染症の約75%は他の動物と共通していると考えられている。その中には、狂犬病のように動物から人に直接感染するものもあれば、最近、主に西日本で発生しているSFTSなどのように、マダニなどの節足動物が媒介するものもある。

元々、野生動物に由来すると考えられる感染症の拡大には、病原菌を持つ動物の分布拡大や生息地の劣化、気候変動など様々な要因が複雑に絡んでいると考えられている。このため、こうした感染症の低減には、野生動物やマダニが生息している生態系で個体群制御の役割を果たす天敵等の機能が十分に発揮されるよう、総合的に対処していく必要がある。

こうした中、森林総合研究所では、マダニ媒介感染症に着目し、国内の野生動物の増加や分布拡大と、病気を運ぶマダニの関係性を明らかにし、野生動物管理を含む適切な生態系管理手法を開発するための研究に取り組んでいる。

 

細菌やウィルスを媒介するマダニ 国内では不明だったその天敵

マダニは、哺乳類、鳥類、ハ虫類の血を吸って生きる寄生生物で、日本では50種程度が知られている。

哺乳類を宿主とするマダニの幼虫は、ネズミなどの小型哺乳類を宿主とすることが知られている。人にも動物にも細菌やウィルスを媒介するマダニは、最近ではシカなどの野生動物の密度増加に伴い、人里に近い森林での増加が懸念されている。

また、国外では、アリなどの捕食性昆虫がマダニの天敵であることが確認されているが、日本ではマダニの天敵はよく分かっていなかった。

 

オオヤドリカニムシがマダニを捕食する天敵であることが示される

森林総合研究所では、コナラなどの優占する森林に多いアカネズミやヒメネズミの調査を実施していたが、その中でネズミの毛をつかんで便乗し、ネズミとともに移動するオオヤドリカニムシという体長5mm程度のカニムシを採取した。

このオオヤドリカニムシは、ネズミに寄生して血を吸うようなことはなく、巣の中で一緒に暮らしているものと考えられている。研究では、実際に飼育が行われたが、このカニムシは成虫になるまで1~2年かかること、成長は2~3年生きることが明らかになった。また、コナダニを好んで食べることが分かったため、カニムシの成虫にマダニの幼虫を与えたところ、たちまち大きなハサミでマダニの幼虫を捕まえ、40分足らずで食べてしまった。カニムシの口は固形物をかみ砕くのではなく、体液を吸うのに適しており、カニムシの食べた後には中身が空っぽで半透明になったマダニの体が残っていた。

また、オオヤドリカニムシは、自分と同じくらいの大きさのマダニ成虫にも果敢に襲いかかり、80%程度の確率で捕食に成功した。この結果から、世界で初めてオオヤドリカニムシがマダニを捕食する天敵であることが示された。

その一方、アカネズミがオオヤドリカニムシを食べたり殺したりする様子は見られず、そばに寄ってきても少し臭いをかぐだけで、カニムシが背中に乗って毛をつかんでも振り落とすことはなかった。この点について、ネズミの血を吸う天敵であるマダニを食べてくれることから、ネズミとカニムシの間に相利共生の関係が存在する可能性がある。

 

森林が野生動物由来感染症の低減に どのように役立つかを明らかに

森に生息するネズミの巣は見つけにくいため、未だ野外でのネズミとオオヤドリカニムシの共生の様子は観察されていない。ネズミとカニムシの相利共生関係を明らかにするためには、オオヤドリカニムシがどの程度ネズミの繁殖や生存に役立っているかを定量的に評価する必要がある。

また、全国的にみると、アカネズミにオオヤドリカニムシが高い頻度で便乗する地域と、ほとんど見つからない地域がある。この点から、オオヤドリカニムシがドングリなどの餌が豊富でネズミの密度が高い森林や、カニムシの餌となる小型節足動物が豊富な森林で生き延びてきた可能性が示唆される。

森林総合研究所では、こうした研究結果等を踏まえ、生物多様性が豊かな森林が野生動物由来感染症の低減にどのように役立つかを明らかにし、その結果に基づく適切な森林管理手法を開発していくことを今後の課題として研究を進めていくとしている。


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