国立大学図書館協会では、大学における学術雑誌購読の危機的状況が深刻化していると訴えている。

価格上昇や円安、海外電子コンテンツへの課税などが要因で、支出の限界を迎え、購読規模の縮小を余儀なくされる大学図書館が増加。大学での教育研究環境の悪化が懸念されると危惧している。

学術雑誌は、大学における教育研究活動の基盤として不可欠で、各大学は整備に全力を注いでいる。学術雑誌を時間や場所の制約なく電子的に閲覧できる電子ジャーナルの登場は、教育研究環境を飛躍的に向上させ、多くの研究者に歓迎された。一方、特に海外の学術出版の商業化・寡占化が進む中、学術雑誌の価格上昇は恒常化しているという。国立大学においては、運営費交付金が年々減少する中、学術雑誌購読の維持が各大学の財政を圧迫し続けている。

2011年に、国公私立の大学の枠を越えて設立された大学図書館コンソーシアム連合(JUSTICE)は海外出版社との間で直接交渉を行い、電子ジャーナルの価格上昇幅を抑制するなど、一定の成果を挙げているが、値上がりそのものを止めるには至っていない。

さらに、2012年以降の円安、2015年以降の海外電子コンテンツへの消費税課税など、複数の要因の影響を直接受ける形で、各大学の支出は大幅に増大している。

2017年度から各国立大学に対して電子ジャーナルの整備に必要な経費の一部が「電子ジャーナル整備支援分」として国から措置されているものの、購読の規模を大幅に縮小せざるを得ない大学が増えているという。

こうした状況を受けて、国大図協は昨年12月21日、電子ジャーナル購読に焦点を当てたシンポジウム『電子ジャーナル購読をめぐる課題―サスティナブルな学術情報流通のために―』を東大理学部小柴ホールで開催した。

シンポジウムでは、苦しい財政から海外学術出版社の電子ジャーナルの購読規模を大幅に縮小することに踏み切った大学から、読まなければならない学術論文の入手が困難になり、教育研究活動の停滞や論文執筆の遅延などを懸念する教員や大学院生の声が報告された。

また、パネルディスカッションを通じて、このような状況が続くことにより、優秀な研究人材が日本の大学から離れてしまうことや、日本の大学に海外からの学生や研究者を引きつけることが難しくなり、教育研究の衰退を招くのではないかとの危惧も指摘された。

国大図協では、学術雑誌購読の危機的状況は日本だけでなく、世界の研究者が関わるグローバルな学術情報流通の問題として捉える必要があると強調。現状の打開に向けて、①各大学は、JUSTICEの活動を通じた価格抑制の努力を続けつつ、短期的にはそれぞれの財政状況や研究分野の特性に応じた学術雑誌購読の見直しを進めることが求められるとしている。

一方、②学術雑誌の価格上昇は、論文の書き手であり読み手である研究者自身にも関わる問題。中長期的には、研究成果の流通や研究評価のあり方を見直し、海外の学術出版社に依存した学術情報流通の構造そのものを改革し、学術雑誌の購読によらない学術情報流通モデルであるオープンアクセスへの転換を図っていくことが必要だと訴えている。

国大図協は、オープンアクセスの推進に積極的に関わっていく方針。

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※「オープンアクセス」:学術雑誌に掲載された論文をインターネットを通じて誰もが無料で閲覧可能な状態にすること。研究者が機関リポジトリ等に論文をセルフアーカイブする方法、APC(論文出版加工料)を支払ってオープンアクセスジャーナルに論文を掲載する方法などがある。