2020年10月23日 大雨を伴う台風は森林倒壊リスクを増大させる 森林管理での具体的な適応策への貢献に期待

北海道大学大学院農学研究院の森本 淳子准教授、人間文化研究機構総合地球環境学研究所の饗庭 正寛特任教授、京都大学防災研究所の竹見 哲也准教授、大阪大学大学院工学研究科の松井 孝典助教らの研究グループは、大雨が台風による森林倒壊リスクを増大させることを突き止めた。

風による被害は比較的小さく雨による被害が大きい雨台風では、これまで知られてきた強風が森林倒壊を引き起こす現象に加え、強風と大雨の相互作用が森林倒壊を引き起こす現象が生じている。この知見は2016年8月下旬に北海道に連続して上陸した台風による森林倒壊を対象にした、機械学習法によるモデリングで得られた。また、尾根筋の森林や斜面方位と同じ方位(正面)から強風を受けた森林は、風当たりが強いため倒壊しやすく、台風期間中の降水量が多い森林ほど倒壊しやすいことが判明した。降水量に対する感度は優占樹種により異なった。

今後、気候変動により、日本では台風による雨量増加が予想され、森林倒壊による林業被害・インフラ破壊を最小限に抑える適応策が求められている。雨台風による森林倒壊のメカニズム解明につながる現象や森林倒壊のハイリスク条件を解明した今回の研究成果は、森林管理における具体的な適応策を見出す上での貢献が期待されている。

 

 雨台風の特徴を解明して被害軽減につなげる

気候変動による影響で、台風による雨量増加が予想されている。強風による森林倒壊メカニズムについては、これまでも多くの研究が行われ、成果が報告されているが、強風と大雨による森林倒壊メカニズムについては未解明な点が多く残されており、将来の林業被害やインフラ破壊を最小限に抑えるために、雨台風の特徴を解明し、森林管理における適応策を見出すことが求められている。

 

 3つの台風による森林倒壊を調査・解析

今回の研究では、2016年8月下旬に北海道に上陸した3つの台風による、道南325平方キロメートルにおける森林倒壊を対象に調査・解析が行われた。

具体的に、調査では、森林倒壊の現場に赴いて根返りと幹折れの状況を確認。解析では、衛星画像で倒壊地を地図化し、倒壊に関係しそうな気象・地形・森林の変数17個を全域で計算した。

また、台風の進路や風速についてはシミュレーションにより再現し、これらを基に森林倒壊が発生しやすい場所を予測できる勾配ブースティングモデルを構築した。

 

 強風だけでなく大雨も倒壊引き起こす

調査・解析の結果、雨台風では、強風だけでなく大雨も森林倒壊を引き起こす要因であることが分かった。

具体的には、尾根筋の森林や、斜面方位と同じ方角(正面)から強風を受けた森林は、風当たりが強いため倒壊しやすくなる。さらに、降雨量が多いほど倒壊しやすくなるが、その感度は優占樹種によって異なる。感度が高い樹種は、感度が低い樹種に比べて側根密度が低い傾向があり、倒壊メカニズムに深く関連している可能性がある。

このため、雨台風に対する森林管理上の適応策として、「尾根筋への造林を避ける」、「側根密度の高い樹種で造林する」ことなどがあげられる。

 

 実証やモデリングでの仮説検証が必要

今回新たに発見された強風と大雨が森林倒壊を引き起こす現象のメカニズムについて、研究グループは ①風に揺すられて土壌と根系の間に間隙ができる、②風上側の根鉢の縁に複雑なひび割れが発生する、③根鉢の底面が引き延ばされ垂直根が分離した結果、根鉢の下に不規則なひび割れが現れる、④①~③すべての間隙に雨水が流れ込み、最終的には根鉢の下の土壌含水量を上昇させる、⑤根の固定力が下がり、根返りする、⑥根系の形状によって根鉢の下に浸透する水分量が変わるため樹種間で雨量に対する感度が異なる、といったいくつかの仮説を立てているが、今後、実験やモデリングなどでこれらを検証していく必要がある。

また、風台風では自然林より人工林の方が倒壊リスクが高いことが実証されており、これらの成果を参考に、気候変動に対する森林管理の適応策の構築に役立てられることが期待される。


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