2019年7月23日 大阪の地中熱ポテンシャルに期待 地下水資源「見える化」で今後の都市づくり

国立研究開発法人産業技術総合研究所の地圏資源環境研究部門地下水研究グループは、大阪平野の水文環境図を作成した。また、再生可能エネルギー研究センター地中熱チームと共同で地中熱利用システムに対応した2種類の地中熱ポテンシャルマップを整備し、水文環境図とともにウェブサイトに公開した。

水文環境図は、地下水の水質、水量、温度、帯水層特性などを取りまとめた地図。地中熱ポテンシャルマップは、水文環境図の地下水情報から関連する地質・地下水位・地下温度などのデータを抽出し、解析を加えて作成した地中熱の利用可能性を示す地図。

西日本最大の経済都市域である大阪平野の水文環境図を整備し、大阪府と共同で冷房需要に対応した地中熱ポテンシャルマップを初めて作成したことで、学術成果を地域の特性に応じた形で還元し、地中熱利用システムの社会実装への道筋をつけることができると期待される。

地下水は生活用水のみならず、工業用水や農業用水として都市圏の経済を支えてきた。しかし、1930年頃から過剰揚水による地盤沈下や塩水化が顕在化し、東京や大阪などの一部の地域では地下水利用が制限されてきた。

ところが近年では、地下水位の回復による地下鉄などの地下構造物への漏水も問題化し、地下水位の上昇への対策に迫られている地域もある。こうした状況から、持続可能な地下水の利用と保全、新たな技術を活かした地下水利用が求められている。

 

地下水の熱や温度差を利用

地中熱利用システムは地下水の熱や地下の温度差を有効利用して、少ない電力で冷暖房を行うことができる省エネ技術で、東日本大震災をきっかけに、昨今ではヒートアイランド現象や地球温暖化の抑制技術としても、注目を集めている。

これまでの研究例では地中熱利用システムの導入により、年間で40%から50%の節電・省エネが実証されている。しかし、地域に適した地中熱利用システム設計や設置コスト試算を行うための情報が不十分であることなどが普及のネックとなっている。

大阪平野の水文環境図は、既存の報告書や論文から地下水に関する地形・地質構造や過去から現在にかけての地下水位、水質、温度データを抽出し精査した。大阪平野を形成する花こう岩など古い基盤岩とその上に堆積している約258万年前から始まる更新世以降の堆積物を第1帯水層から第4帯水層までに区分し、それぞれの帯水層での地下水の比湧出量、水質、基底面の深さなどの特徴を取りまとめた。

 

他の西日本でも整備可能性

地中熱ポテンシャルマップでは、大阪平野の平均的な気象条件で、一般的な戸建住宅1軒の冷暖房需要を賄うのに必要な「熱交換器の長さ」の分布が示された。一般に、地下水流動の早い地域ほど効率的に熱交換できるため、地中熱利用システムに必要な熱交換器の長さは短くなる。熱交換器の長さが短いほど設置コストが安く、地中熱ポテンシャルが高いと言える。大阪平野全体では、地下水流動が活発な富田林市や河内長野市の周辺で熱交換器の長さが最も短くなる傾向が見られた。

冷房需要の高い大阪府周辺で初めて地球熱ポテンシャルの評価手法を適用できたことで、他の西日本地域でも冷房需要を想定した地中熱ポテンシャルマップの整備に展開できる可能性がある。また、地域ごとの地下環境に適した地中熱利用システムが定量的に「見える化」したことで、地中熱利用システムの導入コストや設置を具体的に検討しやすくなる。これにより、地域ごとの地下環境に最適なシステム設計の促進にも繋がることが期待される。

研究グループでは、今後、新潟平野・静岡平野・京都盆地・和歌山盆地・北九州地域などの水文環境図の整備を進め、順次公開していく。また、暖房需要の高い東日本地域に加えて、冷房需要の高い西日本でも地中熱ポテンシャルマップの整備・公開を進めていく。


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